ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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首領」
「なに、少々ブリューヌやジスタートの内情に詳しいだけだ」
ただ、ドナルベインにはひとつ気になることがあった。
気になることとは、朝露の残る髪の長い男の事だ。
(しかし、長髪に黄金獅子篭手の男、吟遊詩人の歌で聞いたことがあるような……)
ジスタートよりはるか東の大陸で、未曾有の災厄を止めて見せた騎士と勇者の唄を。
歌の名は『獅子と黒竜の輪廻曲』といった。
『翌日明朝・アルサス・ヴォルン家屋敷』
「だめだめ!しっかりしなきゃ!」
顔をパンパンとたたき、気合を入れるティッタ。
一度や二度の失敗でくじけていられない。
昨日は凱がいてくれたからよかったものの、もし、凱の助けがなかったら、命を落としていたかもしれない。
その恩人の凱はティッタに協力を申し出たが、やんわりと断られた。
「折角の申し出はありがたいのですが、無関係の人を私たちの都合で巻き込むわけにはいきません」
と言われた。
確かにそれは事実であって、とりわけ凱にはブリューヌの接点もなければ、アルサスに縁があるわけでもない。
バートランは何も言わなかったが、無言で頷くあたり、どうもティッタと同じ意見らしい。
何とか押し通そうと凱は考えたが、すぐ一拭した。
自分の意思をティッタに押し付ける形で、彼は彼女を困らせたくない。
断られた凱はというと、ヴォルン家を離れて近くの宿に泊まっていた。郊外調査の為、当面はセレスタを基点として調査をする予定だ。
「ティグル様……あたしに勇気を」
密かに決意を抱いたのも束の間、ドカドカと外が騒がしくなる。それに、玄関の窓から大勢の人影が見える。
「……どなたですか?」
そんなティッタの言葉もむなしく、次の瞬間、問答無用で男の集団がヴォルン家に土足で上がってきた。
男はせいぜい10人程度、どれもが大きい木の幹のような腕を持つ屈強そうな男どもだった。
剣を肩に担いでトントンとならし、帯刀の鍔をキンキンとならす。ゴロツキや野盗の仕草と大して変わらない。
冷や汗と固唾がティッタを感情的に恐怖へと追い詰める。
「あなたは!?昨日の!?」
あの不快な顔には見覚えがあった。獅子の鬣のような髭、血に乾ききった卑しい目つき。間違いない。昨日の騒ぎを起こした人物だ。
「ふはははは!なんとも質素な作りよの!所詮は貧乏貴族の住処か!」
ドナルベインがドス黒く笑う。それにつられ、配下の連中もゲラゲラ笑う。
ヴォルン家当主との大切な思い出が詰まったこの居場所を馬鹿にされ、ティッタの怒りがついに爆発した。
小さな侍女の震える声が、恐怖と怒りを示してい
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