ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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は戦死してしまったのだという。
「……もし、お金を用意できなかったら、ここの領主様はどうなってしまうのですか?」
いいにくそうな口調で、凱はそれとなく聞いてみた。
たいていは奴隷商人に売られるのがオチ……とは、バートランからは決して言えなかった。
「捕虜の中には敵に仕え、現地の妻を娶って一生を……」
「妻を娶って!?そんなのだめです!」
バートランの言葉を遮って、ティッタはすさまじい剣幕で言い寄った。
「あたし、もう一度お金を集めてきます!」
その少女の強い決意に、凱とバートランは顔を上げる。
折れかけた希望を少女は再び胸に抱いて決意する。
「ティッタ……」
――ティグル様、きっとお救いして見せます!待っていてください!――
アルサスの人々が、領主に対して行動している。
俺に出来る事って、一体何だろう。
部屋の窓際をぼんやり見て、そう自問を繰り返す凱であった。
『ブリューヌ・ヴォージュ山脈・とある隠れ家』
凱がヴォルン家屋敷に訪れて数刻後のことだった。
外はすっかり夜である。
薄暗い帳の中、男どもが小さな小屋にて集会していた。
その男どもの中に、自称―獅子王―を名乗る人物が含まれていた。
30人ほどの気味悪い集まりは、飢えた獣の集団のそれだった。
「ふっふっふ!やりましたぜ!ドナルベインの兄貴……いや、今は獅子王でしたね!」
背丈の低い陰気そうな男達がひそひそという。
「こんだけの金があれば、一大兵団を結成できやすね!」
大人の頭などゆうに超えるほどの大きさを持つ、金貨の入った袋を自慢げにもてあそぶ。
「まだだ。まだ足りない」
威圧ぎみた声で言ったのは、男どもの首領、ドナルベインと呼ばれた男だ。
「もう少し……もう少しで十分な資金は集まる。テリトアールの連中が終結次第、国獲り開始だ!」
国獲りとはずいぶん身の程知らずな夢を抱く。
人の血を吸い続けた剣が不気味に輝く。このブリューヌの情勢が腑抜け状態である以上、好機を逃す手はない。
―国内に内乱の兆しあり。―
―二大貴族、テナルディエ家とガヌロン家の激突―
―レグナス王子戦死に伴い、王は完全に放心状態―
―王政には、宰相ボードワンを除けば力不足の三流だけが残った―
―黒騎士ロラン率いるナヴァール騎士団はザクスタンとアスヴァールの小競り合いに明け暮れる日々―
これほど隙だらけのブリューヌ内を見逃すなどもったいない。
「アルサス領主がジスタートの捕虜になったっていう噂は本当でしたね。身代金を寄せ集めているっていう読みは大当たりでしたよ。
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