ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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気さくな青年は、片手をさりげなく上げて挨拶する。
そっか。あたしはこの人に……
最初の出会いが最悪だった。ティッタ自身、それを思いだすと顔から火が出る思いでいっぱいになった。
気にするなと、この青年は言ってくれたが、なかなか頭の中から離れないものだ。
そして、バートランから語られることによって、凱はブリューヌの情勢を知ることとなる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ジスタートの捕虜?」
まるでオウム返しのように凱は思わずつぶやいた。
ティッタから配られた粗茶を飲もうとしたとき、凱はぴたりと飲むのを止めた。
「マスハス卿は金銭を立ててくれる知り合いを、いくつかあたってみると……」
バートランが、どこか歯切れの悪そうな言い方をした。おそらく、悪い結果を予想しているのだろう。
凱はその名に心あたりがあった。
(マスハス卿?先日すれ違った御仁がそうだったのか。そういえば、あの時かなり落ち込んでいたな)
そして凱は一口粗茶を含んで味わう。素朴で優しい彼女の味に凱の味覚は潤った。
「先日、戦争があったって聞きましたけど?この娘がお金を集め回っているのとなにか関係があるのですか?」
凱は、そのようにバートランに尋ねた。
この娘の行動がいかにして結びついているかが確信を持てていなかった。
「ガイ殿……実は」
戦争の発端はこうだった。
重々しくバートランの口が開く。
「ブリューヌ王国とその東のジスタート王国が刃を交えるのは実に二十数年ぶりのことじゃった」
今回の争う原因となったのは、――国境線の川の氾濫にともない起こった川の管理をめぐるいさかい――とのこと。
そちらの治水対策に問題があったといえば、そちらが川の管理をまともにしないからと言い返す始末。
いさかいの結果、ブリューヌ二万五千とジスタート五千がディナント平原で相対する結果となった。
なぜ、自然災害に国家の命運をかけたかのような大軍が召集されるのか、それはここ、ブリューヌ王国レグナス王子の初陣だったからだ。
「まるでこどもの喧嘩に親が出てくるようなものですね……」
「マスハス様と同じ事を言いますな」
なんとも感心しがたい表情で、凱はつぶやいた。
バートランは苦々しく言い返す。そして両者は茶を一口する。
他人から聞いても見ても、結果は火を見るより明らかだと思った……が、真実はそれほど単調ではない。
結果として、ブリューヌは負けたのだ。相手の五倍の兵力をもってしても――
凱は推測した。この兵力差の意味は、おそらくレグナス王子に初の実戦経験をつませようと思ったのだろうと。
しかし、そのレグナス王子
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