ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
[4/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
はティグルの存在を知らない。
「ごめんください」
そうヴォルン邸を訪ねると、凱のしらない一人のご老体が応対に出てきた。
成り行きと事情を話した凱は、老人に屋敷内へ案内され、一服することにした。
侍従の老人の名はバートランといった。
――ヴォルン家に仕える侍女ティッタは、夢を見ていた――
〜ティグル様!起きてください!〜
お寝坊さんの主様を起こすのが彼女の役目。これはまだ、ディナントの戦いが起きる前の事だ。
〜今日は狩りの予定なんてないけど?〜
〜みなさんが待ってますよ!〜
〜しまった!〜
こんなどうでもいい平和なやり取りも、今となっては昔の事。
もう、日常は帰ってこないのだろうか?
〜どうしてティグル様が行かなければならないのですか〜
〜陛下からの招集だ。ヴォルン家の当主として、要求に応じないわけにはいかないさ。でも……〜
〜でも?〜
〜俺達は一番後方へ配置されると思う。武勲なんて到底無理だろうな〜
〜武勲なんてどうでもいいです!〜
〜ティグル様!必ず、必ず帰ってきてください〜
〜ああ、約束するよ〜
だが、くすんだ赤い若者は帰ってくることはなかった。
後に知ることとなった被害は、こうだった。
戦死者が7名、負傷者が10数名。詳細は逃げる味方につぶされたとの事。
実質的被害より、本当の被害は「ヴォルン伯爵は敵の捕虜となった」という心的のアルサスの人々の心にあった。
彼女の意識は、今を以て現実へ帰還する。
『ヴォルン家の屋敷・客室の間』
「シシ……オウ……ガイ……殿といったかの?あなたの言葉を疑ってすまなんだ」
「いえ、分かってくれてよかったです。バートランさん」
凱の名前を呼びにくそうにして、目の前の老人は青年に詫びをいれた。どうも、ブリューヌ人にとって、濁音の強い日本人の名前は呼ぶだけで大変そうだった。
目の前の老人は、バートランと名乗った。この屋敷の主様の従者だという。
とりあえずティッタを送る為にここへ来たが、顔の知らない青年と気を失っていたティッタを見て、バートランは少々混乱した。
「あ……れ?……私は……バートランさん?」
そして、ソファーの傍らで横にさせていたティッタがちょうど目を覚ましたというわけだ。
「気が付いたか!ティッタ!」
バートランさんが安堵の声を上げた。そして、ティッタはすぐさまバートランと対面に座っている凱に視線を合わせた。
「あ、さっきの髪の長い人……」
「おっす。怪我がなくて何よりだ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ