ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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宣言した割にはあっけない幕切れだったと凱は思った。
「お前のような奴に獅子王は語らせるわけにはいかないさ。それに……」
盛大に前へ倒れこんだドナルベインを見据えて、凱は小さく呟いた。
「自分より弱い人々に手を上げるやつに、反則呼ばわりされる筋合いはない」
――――――――――しばらくして――――――――――――
「もうじき警備兵達がここへ来る頃だな」
ウィルナイフを左腕の獅子篭手に納刀し、周りに被害が出ていないか確認していた。
「あ、あの……ありがとうございます」
深々とティッタは頭を下げた。まだ、戦いの余韻が冷めないのか、ティッタの口調には僅かな動揺が見られた。
しばらくすると警備兵がやってきた。事情聴取と事後処理の段に追われている。ドナルベインの投獄行きを確認すると、凱はティッタへ返事をした。
「礼ならバートランさんに言ってくれ。あの人が俺に教えてくれたんだ」
「バートランさんが?」
視線だけ後ろに向けると、そこにはバートランがたっていた。彼も事態の収拾に全力を尽くした一人である。
「すまねぇ、ティッタ。でも、こうするしかなかったんじゃ」
昨日、ティッタは凱の協力を断ったばかりだ。だが、今回のようなことが起きたばかりでは、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
しかし、結果的には凱が真っ先に来てくれたおかげで、被害はほとんど皆無で済んだ。バートランの決断がなければ、ティッタの命も危なかったのだ。
「それにしても……」
いまだ地に伏せる男たちを見回して、バートランが固唾を飲んだ。無理もない。屈強そうな男たちが成すすべもなく倒されたのだから。
「たった一人で、ガイ殿一人でこれほどの人数を?」
凱は何も語らない。すなわち、肯定だった。そして、唐突に凱から別れを告げられた。
「警備兵の事後処理もそろそろ終わりそうだし……俺はこの辺で失礼するよ。バートランさん、ティッタ。元気で……」
「まさか、ガイ殿。すぐにアルサスを発っちまうんじゃぁ……?」
本当にまさかの出立宣言だ。何か不安そうにバートランが凱に言い寄る。その表情はやや青ざめている。
ディナントの敗戦以降、アルサスの治安が緩みつつある。
領主不在の影響もあるとは思うが、治安が乱れているのはアルサスに限ったことではない。そうなった根源は他でもない王政府だ。
今日のような野盗襲撃事件が起きてしまうようでは、凱のような人格と武勇に優れている人間が求められるのは当然だった。
「俺がいたら、セレスタのみんなが怖がっちまう」
そんなことは……ティッタはそれ以上続きが言えなかった。
心のどこかで、完全
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