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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
瞬殺
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で考えたの。結局のところ、グリゼルダさんを殺したのは、ギルドの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。あの指輪がドロップした時、投票なんかしないで、グリセルダさんの指示に従っていればよかったんだわ」

言葉が途切れると同時に、ヨルコの腰が南の窓枠に当たった。

そのままそこに腰掛けるようにしながら、ヨルコはもう一言だけ付け加えた。

「でも、グリムロックさんだけはグリセルダさんに任せると言ったわ。だから、あの人には、メンバー全員に復讐して、敵を討つ権利があるんだわ」

しん、と落ちた沈黙のなか、冷たい夕暮れの風がかすかに部屋の空気を揺らした。

がて、震えるシュミットが蒼白になった顔を俯け、うわ言のように呟いた。

「なんで……なんで半年も経って今更……」

がばっ、と上体を持ち上げ、突然叫ぶ。

「お前はそれでいいのかよ、ヨルコ!今まで生き抜いてきたのに、こんなわけもわからない方法で殺されていいのかよ!?」

シュミットと、俺、そしてアスナとキリトの視線が窓際のヨルコへと集まった。

どこか(はかな)げな雰囲気を纏う女性プレイヤーは、視線を宙に彷徨わせながら、しばらく言葉を探すようだった。

やがてその唇が動き、何かを言おうとした__。

その瞬間。

とん、という乾いた音が部屋に響いた。同時に、ヨルコの眼と口が、ぽかんと見開かれた。

続いて、細い体が大きく揺れた。がく、という感じで一歩踏み出し、よろめくように振り返ると、開け放たれたままの窓枠(まどわく)に手をつく。

その時、一際(ひときわ)強く風が吹き、ヨルコの背中に流れる髪をなびかせた。

部屋にいた全員がそこに、信じがたいものを見た。

紫色の光沢(こうたく)のあるチュニック。その中央から、小さな黒い棒のようなものが突き出している。

それはあまりにもちっぽけで、瞬間、いったい何んなのかわからなかった。だが、その棒を包み込むように明滅(めいめつ)する赤い光を認識した途端、皆が戦慄(せんりつ)させられた。

あれは、投げ短剣の柄だ。そして刀身は、丸ごとヨルコの体に埋まっている。つまり……窓の向こうのいずこから、黒い短剣が飛来し、ヨルコの背中を貫いたのだ。

前後に頼りなく揺れていた体が、グラッと大きく窓の奥へと傾いた。

「あっ……!」

アスナが悲鳴じみた(あえ)ぎを漏らした。同時に俺は飛び出していた。

手を伸ばし、ヨルコの体を引き戻そうとする。だが。

ショールの端にわずかに指先が(かす)っただけで、ヨルコは音もなく宿屋の外側へと落下していった。

窓から身を乗り出し、俺の目の前で。

眼下の石畳(いしだたみ)に墜落し、バウンドしたヨルコの体を、青いエフェクトが包んだ。


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