第2章 魔女のオペレッタ 2024/08
語られない一幕:影を渡る密告者
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かけはあくまでも思い立っただけ。アルゴの見立てで何らかの情報を持つだろうと有力視されていたところ、実際には掠りもしなかった彼女に僅かばかりの疑いを持ったこと。それが動機。
彼女が本当に《笑う棺桶》の関係者でないのならば、それに越したことはないだろうという確証を得る為の単独操作。幸いにも、アルゴからは捜査対象の情報を写しで貰っていたことも幸いして、当人が見つからないまま捜査にも踏み出せないという間の抜けたオチは回避出来た。
しかし、実際に確認したその実態はどこまでも不信感を煽るものであり、故に彼女は捜査線上から外されることはなく、むしろ懐疑心を強める運びとなった。
追跡者はその後ろ姿を追った。
とある密会と、その席で情報を入手してから四日間。息を潜めて彼女を観察したが、それまでは全く向かうことのないルートを淀みなく進む姿を見て一つ思い至る。足取りや視線の動きから見て、何かを探すような様子はない。目的地は既に定まっているのだろうと。
その推測を肯定するように、依然として鬱蒼とした森をマップデータもなしに慣れた様子で歩み続ける。これまでの追跡からして彼女が追跡者の気配を察知することは恐らく在り得ないだろうが、追跡者は内心でこれまでの情報を考察する。
彼女が一定の拠点を持たなかったのは、そもそもソロプレイヤーではなかったからではないか。
身を潜ませる本来の拠点、それも主街区には設置できない何らかの理由――――例えば、犯罪行為によってイエローカーソルとなったプレイヤーを要する等によって《圏外》に設営する以外になかった隠れ家に身を寄せているのだという仮説が浮上する。
そうなれば、過剰に買い込んだアイテムも《圏内に入れないプレイヤーの代わりに調達した》という確かな目的が成立し、彼女が何らかの犯罪ギルドの構成員であるという目測は現実味を増すこととなる。ファーミングスポットの探索にしても、表立って行動出来ない仲間の戦力強化とするならば得心が行く。
加えて、念入りに観察していた血盟騎士団や聖竜連合は攻略組の屋台骨という立ち位置の他に《笑う棺桶の敵対勢力》としての側面を持つ。物資調達と諜報員を兼ねた役回りであるならば、確かに拠点など必要ないだろう。下手にプレイヤーの多い宿ではなく空き家の一室を利用していたのは、誰かの目に留まらないようにという隠蔽工作だろう。或いは、情報収集の矛先を向けられて過剰に警戒させたからかも知れないが、その所為で拠点に戻るまで主街区に留まって時間稼ぎをしていたとも考えられる。
推測の域を出ないが、彼女の行動に目的を求めて結論を出すならば、差し詰め《笑う棺桶の構成員》か、或いはそれに連なるギルドの構成員。四日間の苦労を水に流すことになるものの、彼女の名誉の為にも無関係な一般プレイヤーであってくれ
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