346部分:第四十七話 北の大地その四
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第四十七話 北の大地その四
「このケーキはな」
「チャイコフスキーっていいますと」
「それは一体」
「つまりだ。西欧文化を取り入れて完全に西欧化した部分もあるということだ」
ロシア土着のもの以外にということだった。
「変わってしまったり新たに根付いたりもしているがな」
「それがこのケーキですか」
「フランス風の」
「このケーキはフランスのそれよりもさらにフランス的だ」
カミュは評しながらケーキを食べるのだった。そのケーキを。
「フランス風だ」
「そういうものなんですか」
「このケーキは」
「何かそう思って食べると」
他の者達も皆ケーキを食べるようになっていた。その中でそれぞれ語るのだった。
「面白い味っていいますか」
「美味いですね」
「そうだな。見事な味だ」
カミュはまた頷いてケーキを食べ続けている。
「ロシアの中に根付いた西欧の味だ」
「そういうことですか。じゃあ最後は」
「やっぱりこれですよね」
聖闘士達が最後に出したものは紅茶だった。ロシアンティーである。あまりにも有名な紅茶の中にジャムを入れたその紅茶である。
それを手にするのだった。カップは白地に青の奇麗なものだった。
「何かこのカップも西欧風ですけれど」
「それでいて、ですね」
「やっぱりロシアですね」
見ればカップの底にはロシアの民族衣装の女の子の絵があった。白地にあるのは青だけではなかったのだ。少女もいたのである。
「成程、こういうことですね」
「これがロシアか」
「そうだ。ではこの紅茶でもロシアを味あおう」
「はい」
「それじゃあ」
皆ロシアの馳走と美酒の最後にその紅茶を楽しむのだった。こうして英気を養いそのうえでレニングラードを発ちさらに北に進むのであった。
進むのは橇で進んでいた。多くの犬に橇を引かせそれで進むのだった。
「犬橇っていうのもまた」
「やっぱりロシアだよな」
「全くだな」
彼等は橇に乗りながらこんな話をするのだった。レニングラードにいた時よりもさらに厚着になっている。周りは見渡す限りの銀世界でまるで雪の海である。
その白銀の海の中を進んでいく。その中でカミュは言うのだった。
「周りに気をつけることだ」
「周りにはですか」
「何時連中が来てもいいようにですね」
「その通りだ。何時来てもおかしくはない」
カミュはまた言った。
「だからだ。警戒を怠るな」
「ええ。わかりました」
「本当にそうですね」
彼等もカミュのその言葉に頷いて答えるのだった。
「隠れる場所はないですけれど」
「連中にとっちゃそんなのあまり意味ないですからね」
「そうなんだよな」
青銅の者達がそれぞれ話していく。そのうえで実際に周囲に小宇宙が存在しているのかを探っていた
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