345部分:第四十七話 北の大地その三
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第四十七話 北の大地その三
「いや、このボルシチって」
「美味いですね」
「やっぱり本場だけはありますね」
誰もがボルシチの味を褒めていた。
「かなりのもんですよ、これって」
「本当に」
「そうだな」
当然ながらカミュもそのボルシチを食べている。銀色のスプーンを右手にその独特の酸味があるシチューを食べているのであった。
「この味は。素朴でありながら」
「しっかりしていますね」
「何かロシアって感じですね」
「このワインも」
既にワインを飲んでいる者もいた。
「いい味ですよ」
「何かロシアでワインっていうのも妙ですけれど」
「ソ連、そしてロシアでもワインは飲まれる」
カミュは今いる場所はロシアであると認識しながら述べた。ロシアはソ連の中にあるのである。ソ連は共和国連邦でありロシア共和国はその中にあるのである。
「れっきとな」
「まあウォッカだけじゃないですよね」
「考えてみれば」
それも当然だった。確かにロシア人にとってウォッカはまさに魂の酒であるがそれだけを飲むわけではないのだ。他の酒もしっかり飲んでいるのである。
「それでワインもってわけですね」
「ビールもよく飲む」
それもなのだった。
「そちらもな」
「結局酒なんですね、この国は」
「それがないとですか」
「ソ連で酒を規制すれば暴動が起こる」
カミュの今の言葉は完全な真顔で話された言葉である。
「多少食料がなかろうが給料の支払いが遅れようがソ連にいる者はその程度で怒ることはない」
「気が長いんですね、つまり」
「そして我慢強いと」
ロシア人の長所である。気が長くそして我慢強いのである。そのうえ素朴で親切である。ロシア人一人一人の人柄のよさはかなり有名である。
「けれど酒は別ですか」
「規制すれば暴動ですか」
「だからこの国で酒は絶対のものだ」
何につけてもまずは酒なのである。
「だからワインも当然の様に飲まれる」
「まあ確かに美味いですけれどね」
「いい感じですね」
彼等はそのワインも楽しんでいた。それは赤ワインである。
「それでこのデザートも」
「フランス風なのに結構似合うのはやっぱり」
「フランス料理の影響を受けているからだ」
またこう答えたカミュだった。今彼はその赤ワインを飲んでいる。グラスを右手に持ちそのうえで貴族然とした面持ちで飲んでいた。
「これもな」
「ええ。上品な味ですね」
「このケーキは」
デザートまで辿り着いた面々が言うのだった。
「他の料理は素朴さも強いのに」
「ケーキだけは」
「ロシアのしゃれっ気だ」
それをこう評するカミュだった。
「このケーキはな」
「しゃれっ気なんですか」
「このケーキって」
「確かにロシアは武骨な国だ」
ロ
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