56.第六地獄・凶暴剽界
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が奔るが、どうでもいい。
それで戦えるならば体が引き裂かれても構わない。
軋む腕を強引に振りかぶり、ヘファイストスの直剣を抉るように正面に突き出す。狙いすます先は、黒竜の腹部中央。この加速と破壊力ならば、捌かれる前にその肉を抉る。代わりに命中した際の反動は全て自分の体で受け止める。アズの魂が弾丸になるように、オーネストの肉体そのものもまた弾丸になりうる。
ギャリリリリリリッ!!とけたたましい音を響かせて刃が逸れる。眩い火花を散らしてすれ違ったのは、反応を間に合わせた黒竜の尾だった。昨日戦った蜥蜴の尾を思い出させるが、黒竜が操るとなるとそれは牙より余程厄介な武器だ。恐らくその先端の硬度と速度は爪を上回るだろう、剣を突き出すのではなく斬るために動かしていれば腹を貫かれて上半身と下半身が分断されていただろう。まぁ、どうでもいいが。
擦れ違い様に浴びせられた黒竜の殺す意志が心地よく背筋を通り抜け――瞬間、身を翻した黒竜の鋼鉄をも粉砕するような鋭い尾がオーネストのどてっ腹に叩き込まれた。べきべき、みちみちと何かが弾け、裂ける音と共に体がダンジョンの壁面に叩きつけられ、吐き出す空気と共に肉片の混じった鮮血が口から噴き出した。
腹と尾の間に割り込ませたヘファイストスの剣は、衝撃で折れる寸前まで捻じれながらも辛うじてオーネストが水風船のように割れる事を回避したらしい。オーネストは自分の口から何が出て、どれほど危険な状態にあるのかも無視して背筋のみで壁から弾かれ、その下にあるリージュの魔法によって壁から生えた巨大な氷柱を足場に着地。間髪入れずに体を強引に捩じり、反動を乗せて折れかけの刃を矢のように投擲する。
黒竜はその刃を鬱陶しそうに風で吹き飛ばそうとし――風を起こした反動で素早く刃の射線上から逃れた。
「チッ………人間の道具の良し悪しまで判別がつくとは、つくづく――鬱陶しいぞ手前はぁぁぁーーーーッッ!!!」
射線上を外れた場所に、壁を蹴った反動で虚空に射出されたオーネストの刃が迫った。
今度はガリンッと鈍い音を立て、黒竜の右下腹部の鱗が皮膚ごと?ぎ取られる。傷は浅いが、天黒竜となって初めて黒竜の体からマグマのように熱い血が噴出する。
一連の流れ――捻じれ曲がっても並の武器を遥かに上回るヘファイストスの剣の強さに気付けなければ、黒竜は風であれを吹き飛ばそうとして失敗していた筈だった。そして、悪態をついた癖にオーネストは黒竜が直前でそれに気付くことを見越して先読みで黒竜を斬りつけた。
壁の対向にあった氷柱の上に叩きつけられるように着地したオーネストは、既に戦えないほどに傷ついた体を強引に引き起こして立ち上がる。瞬間、噴き出した血飛沫が氷柱の上を真っ赤に染めた。引き裂かれた傷の激痛、折れた骨が内蔵を串刺しに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ