56.第六地獄・凶暴剽界
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以外は黙ってて貰えると助かりますねー」
「味方がいねぇ。ブラック組織だブラック組織………」
恨めし気な――何故か主にフーに恨めし気な視線を送ったミリオンは、ぶつくさ文句を言いながら鏡の観察に戻る。彼女の物分かりがよくて助かった、などと心の隅でロイマンは一人ごちる。
「………さて、オーネストが勝てないという話の続きですね?とはいっても、理屈は別に難しくないですよ。恐らく本人には逆に自覚がなく、アズ君辺りは察していたのかもしれませんが――」
少し、間を置いて――。
「オーネスト・ライアーという男はね、生きることに対して真剣になれないのですよ」
確信を持った声で、ロイマンは断定した。
「すべてが行き当たりばったりなのです。この世への八つ当たりの為に行動してる男なので、明確に何かを守ろうとか勝とうと真面目に考える思考がないのです。戦いで怒ったり暴れているのはただ単に暴れているだけ。陰鬱とした煩わしい感情を爆発させているだけ。逆を言えばそれこそがオーネスト・ライアーなのです」
「………オーネストはオーネストだ。そしてオーネストである限り、彼は自分の命に真摯に向き合えない、と?」
「そうです」
フーは視界が白んでいくのを自覚しながら、ふらりとよろけて壁に持たれかかった。
ロイマンの話を聞き、自分の知るオーネストの記憶を必死に掘り起こし、フーは納得した。
納得して、しまった。
「それじゃあ、オーネストを殺すのはオーネスト自身ということですか!?」
「その通りです」
「そんな馬鹿な話が………」
「そんな馬鹿なことを馬鹿正直に貫き通せてしまうのが、あの男です」
そんな生き方が長く続く筈がない。究極的に自己中心的で、暴力的で、己を顧みないままに唯々破壊だけを積み重ねていけば、自分も周囲も必ず綻び、いつか崩壊する。
その在り方を自分で貫き通してしまった狂人は誰だ?
決壊を防ぐようにどこからともなく集まってきたお節介焼き達を虜にした金色の獣は誰だ?
虜にされた人間たちを、それでも自分に近づけさせなかった孤独な男は、誰だ?
つまり、オーネスト・ライアーとは――そういう男なのだ。
= =
精神が肉体を超越し、殺すという意識だけが際限なく加速していく。
自身の脚に掛かる反動を一切無視した踏み込みが地面を割り砕き、踏み出したオーネストの肉体が音速を超えて上空に弾き出される。
生身の人体が音の壁を越えようとすれば衝撃波で引き裂かれて死亡する。いくらオーネストが超人的な身体能力を持った冒険者だとしても、無事で済むはずがない。自分で自分を押し出してすぐ、オーネストの通った空間から裂けた服の切れ端と血飛沫が下にばたばたと零れ落ちた。
全身に裂傷
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