56.第六地獄・凶暴剽界
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大っぴらにオラリオの外には伝わっていない。彼女とて本人に出会ったら、完全ではないにしろそう考えるのも無理はないと思えるだろう。
この街に現れて早八年間、彼の経歴を知っているのもなら誰もが知っている。その血に塗れ、余りにも死と隣り合わせ過ぎた経歴の中で現在まで生き残っているというだけで、彼は既に冒険者の伝説だ。
「しかし、彼と共にいる3人はどうなのでしょうね?一部で『不死者』とまで呼ばれる彼ならばまた生き残るかもしれませんが、残りの二人の肉体はそこまで頑丈ではありませんし、オーネストの心に占めるウェイトも………代償は余りにも大きいですよ」
「そう、か。俺はあの面子のなかじゃアズしか顔を合わせたことないけど、もしもアズが死んだらオーネストは……」
オーネストにとってアズライールという男は唯一の友達であり、あらゆる意味でオーネストを止めることのできる最終安全装置。人間であることを辞めるかのように破滅の道へ突き進み続けるあの救いようのない男を、唯一救えるかもしれない存在だ。
もしアズが死ねば、彼は恐らく――。
アズにしかオーネストを変えられなかったのだ。
アズがいなくなれば、『決定的』になる。
「私の私見ですが、オーネストにとってのアズは既に彼の『家族』に匹敵する程に大きな存在となっています。もしそれを喪えば――今度こそ、彼は崩壊する」
「………え、家族……ロイマンさん、あなた彼の経歴を知って――!?」
「失礼、今の言葉は忘れてください」
ロイマンは額の汗を高級そうなハンカチで拭い、言葉を濁した。
オーネストの過去を知る人間は、フーの知る限りではヘファイストスとヘスティア、そしてあのリージュという女性の3人だけだった。そしてその3人も、決して周囲にオーネストの過去を吹聴するような真似はしなかった。そんな彼について、ロイマンはかなり深く知っているらしい。
本当に、この男はどこまで知って、どこを見据えているのだろうか。これまでギルド代表という犯罪者を遠ざけるべき立場でありながらずっとオーネストの敵にならなかったこの肥満のエルフは、なぜそこまでして。
「………いや、今は詮索は後か。それよりロイマンさん、オーネストに万に一つの勝機もないとはどういう事です?」
『ゴースト・ファミリア』には目的や過去の詮索は必要ない。あるのはオーネストの味方として動くというただそれだけだ。つまり、この男も自分と同じ穴の狢。そんなことよりもフーにはあの暴力の権化のような男に勝利の女神が振り向かない理由の方が気にかかる。
「あのー。当事者の可愛い後輩ミリオンちゃんがまるで話についていけてないのはスルー?」
「スルーで」
「今シリアスな話してるから状況の変化があったとき
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