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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
56.第六地獄・凶暴剽界
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 だから――。

(アズ、てめぇは精々てめぇの未来を自力で掴み取るんだな)

 それはきっと、未練という名の枷。

 自ら外して捨ててしまった、オーネストがオーネストになる最後の枷。

 さぁ、オーネスト。お前は空っぽだ。抱えた罪と破滅的な破壊衝動だけがお前だ。

(全部壊れてしまえ。俺の邪魔をする一切有情を、自分諸共殺し尽くせ)

 今のオーネストにあるのは、この世に存在するありとあらゆる憤怒と激情を掻き集めて数万倍の濃度で抽出したような、空間()を飲み込む奈落の狂気。人間として何か致命的なものを喪失した化け物の表情だった。

「お゛おおおおおおおああああああああああああああああああッッッ!!!!」
『グヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!』

 世界に終わりを告げる終末の獣も恐れ戦く巨大な破滅が、この日、ダンジョンに存在するありとあらゆる存在に決戦の刻限を告げた。未知の魔物と戦闘していたココたちも、オーネストの無茶を知って緊急出動した『ロキ・ファミリア』も、ダンジョンの上の神々も、ギルドの依頼を受けて疾走する彼も、悟った。

 古の怪物と現代の怪物のどちらかが、今日、真の敗者となる。



 = =



「――しかし、今のままではオーネストくんに万に一つの勝機もありません」

 ミリオンが魔法で投影する戦いを見つめながら、ロイマン・マルディールは只ならぬ表情でそう呟いた。

「…………そんな馬鹿な。オーネストは死なない」

 頭を振ったフーが呻くようにそう呟く。その言葉の端には自身が道理の通らないことをのたまっている自覚と、それでもやはりあの男が帰ってくるだろうという信頼が入り混じり、ひどく不安定な感情を吐露する言葉だった。
 
「いやいや、人なんだし。死ぬときは死ぬっていうかむしろ今すぐ死んでも可笑しくな――」
「そうですねー、確かにオーネストは死なないかもしれませんねー。援軍も要請してはいますし、きっと手遅れになるギリギリで救い出されるでしょう。本人にとっては甚だ不本意なことにね」
「ええっ!先輩まで何頭おかしいこと言ってるんっすか!?昨今こどもの絵本にだって死人はいますよ!?現実見ましょうやマジで!!」
(それは君の絵本チョイスが独特過ぎるせいだと思いますが……片足のダチョウとか哀れな象とか好きでしたよね、君)

 この中で唯一オーネストという男の事をよく知らないミリオンだけが、訳が分からないとばかりに顔を顰める。あそこはダンジョンでオーネストは冒険者、そして敵は黒竜だ。むしろ死ぬ条件の方が綺麗に揃っているように見えるだろう。しかし、オーネストを知っていれば納得はしただろう。
 オーネストという男は公式には犯罪者だ。だから彼の情報は
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