56.第六地獄・凶暴剽界
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のパーソナリティに基づいた論理的な動体反応だったのかどうか、アズには判別がつかなかった。
敢えてそれを理屈に合った言葉にするなら、脳の活動を超越した浅ましき生存本能の塊。まるでオーネストではなく、オーネスト以外の誰かがその肉体の本能を代行させているかのようだったという。その事実を耳にしたとき、オーネストは激しく怒り狂い、苛立ちのあまり自分の膝に拳を叩きつけて膝と手の骨を粉砕骨折し、それでも収まらない怒りで自分のいた病室とその隣の部屋に至るまで半径10Mすべてが破壊されるまで暴れた。
黒竜は、これを以ってしていよいよオーネストを明確な『敵』と認識した。
使う未来など来ないだろうと考えていた『深化』をすることも決定した。
『深化』するまでの戦略を立て、あわよくば肉体が再構成される前に滅ぼすことも織り込んだ。1000年余りの間にため込んだありとあらゆる方法に加え、今まで決して助力は請わなかった「母」の力までもを借りた。万全の布陣で待った。
オーネストは、以前よりも早く来たためか今までほど爆発的には成長していない代わりに、取り巻きを3名もこしらえて挑みに来た。母すらも警戒する『死を呼ぶ者』、『抑止力』、途中から精霊の加護を得た奇妙な人間。いずれもオーネストには一歩劣るが、『敵』と呼ぶには値する力を持っていた。おかげで「あわよくば」などと甘い見積もりで立てた作戦は水泡に帰した。
そして今、黒竜はとうとう翼を持たぬ存在への最終手段として空まで飛んでいる。かつて支配した青天井に比べると余りにも矮小だが、ちっぽけな人間を相手にするには十分すぎる程大きな空間を支配下に置いた。
黒竜は静かに、その人とは思えぬほどに凄まじき剣士を見下ろした。
オーネストは今度こそ黒竜の手に掛かるのか、それともこの試練を過ぎて尚も生き延びるか。
依然として力関係は変わらない。
黒竜は3勝、オーネストは3敗。黒竜は今回も自らが勝つと確信している。
だからこそ、問題はたった一つ。その敗北が「死」か、それとも「敗走」かの一つ。
黒竜はオーネストを殺すため、少しでも可能性を削ぐ。
60層のホールに追い詰めることで59層への復帰を困難にし、上空からの攻撃に逃げ場がない環境を作り上げ、広域破壊の波状攻撃で肉の体を徹底的に追い詰める。オーネストだけでなく取り巻きの3人も殺し、危険因子をここで嬲り殺しにする。
今の黒竜は、「取り逃がすかもしれない」などとは欠片も考えていない。
漆黒の狩人の眼光を浴び、オーネストは思う。
今日の自分は、黒竜を相手にするにはいつもの暴走にも似た殺害衝動が足りない。いつもと違う目的でここに来たせいか?我武者羅に、無策無謀に飛び込んでいないせいか?その意志の揺らぎが、甘さが、
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