麒麟
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のだ?」
奉の言葉が終わった直後、俺たちの周りに物凄く『濃い』空気が立ち込めた。何かが凝縮されたような、息苦しいような。奉の表情も歪んだ。
「…ぐ、思った以上だねぇ…」
どうしようもない空気の重さに反比例するように、何故か空気が澄みわたってきた。透明な蜜の中に閉じ込められたような圧迫感に、俺は立っていられなくなり膝を折った。膝をついたその先に、注連縄のようなものが見えた。
「ちょうどいい。俺が合図をしたらその縄を引け」
「お前…これ神社にあった注連縄…!」
「よし、引け」
俺は反射的に注連縄に飛びつき、引いた。なんだか分からんが、これ以上この空気に晒され続けたら窒息してしまう。苦しい息の下で、思い切り引いた。反対側を、何かが引いている。蜜のような空気の中、『相手』の感情?のようなものが胸に流れ込んで来た。ひたすら、困惑している。何だか分からないが、ここに追い詰められるまでに、奉に色々無礼を働かれたことだろう。なのに奉や俺に敵意を向けるではなく、ひたすら困惑している、優しい存在。抵抗する理由も拒否ではなく、人前に滅多に現れてはいけないという『責任感』の為だ。
…俺も、もう流石に察した。これは俺が思っていた『キリン』ではない。
「小梅の自宅まで走る。そのまま乗れ、結貴!!」
もう何が何だか分からないが、とにかく無我夢中で注連縄をたぐる。…乗れ?
「乗れ!?い、嫌だよ何だよこの生き物!!」
「麒麟だ!あれだけ云ったのに聞いてないのか、呆れた奴だな!」
「どっちにしろ嫌だ、お前1人で行けよ!!」
「俺一人で麒麟に乗って現れたら怪しまれるだろうが!!」
俺が居たって同じだろ、こんな状況で!
「じゃあもういい、その縄を放すなよ」
圧倒的な力で縄を手繰られ、俺は思わず縄の方向に目を向けた。俺が持つ注連縄ががんじがらめにしていたのは、竜のような、牛のような、巨大な聖獣だった。ガラスのように青く透明な鱗に覆われた胴はヘラジカのようにたくましく躍動し、その背を覆う黄金のたてがみに、奉がしがみついていた。
―――本当、何だよこの状況。
「おい…これやばい、捕まえたら罰が当たるタイプのやつだ!」
「大丈夫だ、麒麟は基本的に優しい」
そう言い放つと、奉は口を尖らせ、なにやら『音』を出し始めた。共鳴するように麒麟が『音』を返す。そのやりとりが数回繰り返された後、麒麟は突如俺たちをまとわりつかせたまま走り始めた。…驚くことに、俺がふりおとされないように気を配りながら。
―――小梅に見せに行った結果、『変なものにのらないの!』と怒られた。
奉は必死に『何故。小梅が乗りたがっていた麒麟だ。1週間も探し回ったのだぞ。ほーら、鱗がキラッキラだ』と楽しさをアピールしたが、小梅は
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