麒麟
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「……あの、キリンが何なんでしょうかね」
「あの方、滅多なことをしなければよいけれど…」
刹那、きじとらさんが弾かれたように駆け出した。
「えっ!?」
「奉様がお戻りに」
短く云うなりきじとらさんは、敏捷な動きで暗がりに消える。その直後、出口を塞ぐ岩扉がごりごり動く音がした。…俺は気がつきもしなかった。きじとらさんが凄いのか、俺が特別勘が悪いのか。
「手伝え。奴を追い詰めた」
奉は洞に入ってくるなり、俺の袖を掴んで踵を返した。ついて来ていたきじとらさんは、襤褸布に包まれた荷物らしきものを受け取って一礼した。…心なしか、頬に赤みが戻ったようだ。
「奴とは」
この一週間、ろくに風呂にも入らず、髭もあたらなかったのだろう。元々の蓬髪に加えて妙な匂いがする。無精ひげも加わって、ほぼ若年ホームレスの風体だ。
「麒麟だ。この鎮守の杜に追い込み…あれだ、結界?そういうものを張った」
要はこの山から出られない状態にした、と呟き、奉は周囲を見渡した。…結界?ロープでも張ったのか?
「結界?を絞って徐々に範囲を狭くする。近づくぞ」
「いやまて、キリンがそこら辺に居るのか!?今現在の話!?」
聞き捨てならねぇぞさっきから。
「苦労したなぁ」
「苦労したじゃねぇよ!怒られるぞ!?なにお前、そんなに小梅大事!?法律に背いてまであんな幼児の思いつきトークにつきあうのか!?」
「…麒麟に乗る。『あれ』に乗るなんて発想、俺にはなかった!」
心底愉快そうに笑った後、奴は再び油断なく周囲に目を配った。
「……流石、俺の花嫁だ」
「おい!もう聞き捨てならねぇぞ!!」
この野郎、やはり小児性愛者だったか!!
「今のは聞かなかった事にしてやる。だが二度と云うなよ、姉貴はお前こと少し疑っているんだからな?」
「俺がどうこうしたい訳じゃねぇよ。あの子が、大きくなったら奉お兄ちゃんと結婚すると云うからなぁ」
「そんなの俺も云われたよ!!俺の弟も、多分小梅の父さんも!!」
「…重婚ね。可愛い振りしてやるもんだねぇ…」
「結婚も!キリンも!!お前はいちいち子供の云うことを真に受けるな!!」
―――くっそう、キリン何処だ、あんな長い首で雑木林に迷い込んで怪我でもしたら…!!一刻も早く捕獲しなければ。いや、素人がむやみに追い回すのもやばいか!?
「…一回、動物園へ戻って協力を仰ごう。今なら間に合う、俺も一緒に詫びをいれるから」
「誰にだ。麒麟は誰の所有物でもない」
「うん、そうだな、たとえ人でもキリンでも等しく命だ。誰のものでもない。お前の言い分は分かる。でも法律上は動物園の所有ってことになってるの。それを勝手に連れ出すと、物凄い怒られるの。分かるよな、大人だもんな」
「―――動物園、動物園と。お前はさっきから何を云っている
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