『Umbrella』
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ほらまた着せかえ人形。
真っ白いフリルのついたワンピース。
紐を結ばれ靴も履かされ、自由なんてものは夢物語。
此の頑丈な鉄の鎖は外れない。
やまない雨が、強まる雨音が、恐怖を後押ししてく。
命を孕んだ此の躰を、イタミしかない此の躰を、あなたは弄ぶ。
イヤダ、イタイ、ヤメテ...あなたには何ひとつ聞こえない。
私も、もう言わない...。
可哀想な私、あわれな私。
そして可哀想なあなた、あわれなあなた。
激しくなった雨の中、傘だけを持って裸足で走った。
真っ白いフリルのワンピースは真っ黒に変わり、傘をさして寒さを凌いだ。
濡れた躰は冷たくなり、次第に熱くなる。
傘の下で丸くなり、眠りにつくと其処には血の海が待ってる。
今此処が奈落の底だというのなら早く這い上がらせて。
早く掬い出してよ。
こんな運命、辛過ぎる。
誰がこんな運命を辿らすの?
誰がこんな運命を決めたの?
誰が何の為にこんな運命を...?
此の日の私の命は唯1本の傘が守ってくれた...。
着せかえ人形にだって心は在ったんだよ...。
頑丈な鉄の鎖が外れる事を誰より願ったんだよ...。
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