第十七話 姉妹の薔薇その六
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「その二つを」
「その二つでというの」
「違いますか、姉様のこの二つで」
「その二つがあろうとも私は側室の娘」
自分を何処までも卑下して言うのだった。
「このことは何があっても変わらないから」
「それでというのですか」
「私は誰にも好かれないし愛されないわ」
「私にもですか」
「貴女がそう思っているのなら」
今自分に好意と愛情を告げたマリーにも返した。
「それは間違いよ」
「間違いといいますと」
「貴女のね」
それになるというのだ。
「自分がそう思っているとね」
「私が間違えているというのですか」
「そう、私を好きで愛しているとね」
「違うと思いますが」
「自分が思い込んでいないというの」
「私は妹ですから」
あくまでと返したマリーだった。
「ですから」
「どうしてもというの」
「そうです、血を分けた姉妹ではないですか」
「何度も言うわ、私と貴女は違うわ」
マイラの言葉は変わらなかった、言葉を出させている考えもだ。そのどちらも全く変わることはなかった。
「貴女は何でも持っているわ」
「そう仰るのですか」
「私と違って。それでどうして」
「同じ姉妹とですか」
「言えるのかしら、貴女は本当にね」
唇を微かにであるが噛み締めてだ、マイラはほんの少しだけ俯いてそのうえでマリーに対して言ったのだった。
「何でも持っているわ、愛情も手に入れているけれど」
「姉様はですか」
「持っていないわ、何もかもを」
それこそというのだ。
「その貴女と同じである筈はないわ」
「姉様も持っておられますが」
「ないわ」
一言だが完全な否定だった。
「私のことは私が一番知っているわ」
「お姉様・・・・・・」
「私は何も持っていないわ、けれど」
「けれどどは」
「貴女の申し出は受けさせてもらうわ」
冷たい顔のままだ、そのうえで葡萄酒を飲んでから言った。
「そうさせてもらうわ」
「ではお墓に」
「参りましょう」
共にと言うのだった。
「そうしましょう」
「では」
「次の祝日に」
「はい、その日に」
「二人でお父様の、そして先王のお墓に参りましょう」
「お花も持って」
「そのうえで参りましょう」
これはいいとだ、マイラは答えた。
「ではね」
「祝日に」
「そうしましょう」
「こうしてお会いすることは」
「また私と会いたいのかしら」
「なりませんか」
「私なぞと会って何になるのか」
自身を卑下する言葉をだ、マイラはまた出した。自然と顔は俯くがそれでも目はそうなってはいない。しかも俯き加減も僅かだ。
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