第十七話 姉妹の薔薇その五
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「それは」
「妹ですので」
「だからというの」
「はい」
その通りという返事だった。
「そうですが」
「私を好きというの」
「なりませんか、それは」
「いえ」
あらためてだ、マイラはマリーに答えた。
「構いません、ただ」
「ただ、とは」
「何故貴女は私を好きになるのか」
「わからないというのですか」
「姉妹というだけで」
「姉妹だからですが」
それでもとだ、マリーは答えた。
「それは」
「そうだというのね」
「はい、今では二人だけの姉妹ですから」
先王であった弟が死んでというのだ。
「ですから」
「わかったわ、けれど」
「けれどとは」
「私なぞを好きになっても」
それでもというのだ。
「何もないというのに」
「好きになることに見返りが必要なのですか」
マリーはマイラの今の言葉にだ、怪訝な顔になり問うた。
「それは」
「それは」
「私はいらないと思いますが」
「そうであっても」
それでもとだ、マイラは答えた。
「いいというの」
「私はそう思いますが」
「だからこそ」
「私はお姉様が好きですし愛しています」
愛しているともいうのだった。
「心から」
「そうなの」
「お嫌ですか?」
怪訝な顔で姉の目を見て問うた。
「それは」
「いえ」
マイラは顔を背けなかった、そのうえで妹に答えた。
「いいわ」
「左様ですか」
「私を好きになり愛することは、けれど」
「けれどとは」
「はっきり言うわ、その言葉は信じられないわ」
「何故ですか?」
「私が好かれ愛されることはないから」
こう言うのだった、自分で。
「決して」
「それは違います」
「違わないわ、私は側室の娘よ」
劣っているというのだ、このこと自体が。
「貴女は正室の娘で」
「それは」
「しかも旧教徒よ」
このことも言うのだった。
「貴女とは全く違うわ」
「姉妹ですが」
「姉妹でも違うわ、そもそも側室の子である私が王家にいなければ」
それこそとだ、マイラは表情を消したまま言うのだった。
「誰が私を見るのかしら」
「お人柄と資質を」
マリーは実際に自分が見ているものをだ、姉に話した。
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