第十七話 姉妹の薔薇その三
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「いつも葡萄酒はこうして飲んでいます」
「赤薔薇、白薔薇、黄薔薇」
マイラはその薔薇の色も言葉に出した。
「貴女とマリア、セーラね」
「はい、実は二人もです」
「葡萄酒はそうして飲んでいるのね」
「そうです、私達三人はです」
「三人共そうして飲んでいるのね」
「いつもそうしています」
「そうなのね」
マリーの話を聞いてだった、マイラは。
自分の杯を見た、そこには紅の美酒があるだけだ。花びら達は一枚もなくただ酒が存在しているだけだ。
それでだ、マイラはこうマリーに言ったのだった。
「私はそうしたことはなかったわ」
「では姉様も」
「貴女の様にして飲めばいいというのね」
「はい、そうされてはどうでしょうか」
こう姉に提案した。
「これより」
「そうすると美味しいから」
「そうです、私達はいつもこうして味わっています」
「味と、そして」
今度はマリーを見て言った。
「絆を」
「私達はいつも一緒でしたので」
マリーはこのことは素直に述べた、事実でありマイラに話しても悪いことではないと判断してそのうえでのことだ。
「ですから」
「三人共そうして飲んで楽しんでいる」
「二人はそれぞれの国に嫁ぎましたが」
マリーはこのことは寂しい微笑みで述べた。
「ですが」
「それでも三人共」
「こうして飲んでいます、そして」
マリーは薔薇達を見た、自分達の傍の。
そしてだ、こう言ったのだった。
「薔薇達もです」
「二人のそれぞれの国にも送ったそうね」
「そうです、三色の薔薇を」
それぞれというのだ。
「赤薔薇、白薔薇、黄薔薇を」
「三色を」
「そうしました」
「貴女達の薔薇を」
「そうしています」
「そうですか」
「はい、そうです」
姉に正直に答えた。
「私達は離れ離れでも一緒なので」
「三人は」
「そうです、では姉様は」
「私もというのね」
「そうして飲まれてはどうでしょうか」
「私もまた」
マイラはここまで聞いてだった、そして。
葡萄酒を見た、自分の。
それからだ、妹にあらためて言ったのだった。
「私はいいわ」
「何故ですか?」
「このままでいいから」
だからだというのだ。
「これでいいわ」
「左様ですか」
「ええ、薔薇はね」
ここで遠い目になってだ、マリアはマリーに言った。
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