第十七話 姉妹の薔薇その二
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「まさに」
「その氷の壁も」
「はい」
「では私達は」
「このままですね」
「見守りましょう」
「あの方々を」
こう話してだ、侍女達は二人を見守ることにした。そして。
マリーはマイラにだ、こう言ったのだった。
「お姉様、今日は」
「ええ、二人でね」
マイラも応える、だが。
見ればだ、二人の顔は。侍女達はそれを見て言った。
「マリー様も緊張しておられ」
「マイラ様は無表情で仮面の様」
「これではどうなるのか」
「とても」
不安だとだ、覗き見つつ言うのだった。
だがマリーは必死にだ、姉に言った。
「まずは席がありますので」
「そこに座って」
「何かのみましょう」
「そうね」
無表情のままだ、マイラは妹に答えた。
「そうしながらお話をしましょう」
「ではお飲みものは」
「贅沢なものでなければ」
これがマイラの返事だった。
「何でもいいわ」
「左様ですか、ではです」
かねてから考えていたことをだ、マリーはここで述べた。
「葡萄酒はどうでしょうか」
「お酒ですか」
「はい、主の血をです」
こう姉に申し出た、二人が座るべき席、テーブルも用意されていて薔薇の傍にあるその席を見ながらである。
「飲みませんか」
「はい」
マイラは妹の申し出に答えた。
「主の血でしたら」
「飲まれますね」
「断ることはありません」
こう答えた、実はマリーはマイラが葡萄酒は主の血であるから勧められると断らないことを知っていた、そのうえで誘ったのである。
「決して」
「それでは」
「共に飲みましょう」
「では今より」
マリーはここで鈴を出して鳴らした、そうして。
参上した侍女の一人にだ、穏やかな声で告げた。
「赤い葡萄酒を二つ」
「畏まりました」
侍女はマリーに一礼して答えた、それから阿なくしてだった。
葡萄酒が二杯運ばれてきた、そのうえでだった。
マリーは侍女にだ、微笑んでこうも言った。
「いつもの様に」
「マリー様の杯にはですね」
「そうして下さい」
「それでは」
侍女は礼儀正しく答えてだ、すぐに。
薔薇達から花びらを取った、赤と白そして黄色の。その花びら達は杯の中に入れられてだった。
マリーにあらためて差し出された、その葡萄酒を見てだった。マイラは無表情のままマリーに対して問うた。
「薔薇は」
「はい、私はいつもです」
「そうして飲んでいるのね」
「そうです」
その杯を前にして述べた。
「この様にして」
「そうなのね」
「こうして飲みますと美味しいので」
だからだというのだ。
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