第二十九話 巻き返し
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ことが鳥海をほっとさせ、そして喜ばせていた。
なんといってもギスギスした環境ほど人を委縮させ、士気を低めるものはないからだ。
偵察機が帰還したのは、思いのほか早く1時間ほどでだった。それを素早く収容して情報を聞き取った比叡たちはうなずき合い、帰還の道に着いた。もう日は沈み、あたりは月明かりに照らされて波が静かな音を立てているだけだった。
「やはりミッドウェー諸島には強力な敵艦隊が駐留しているようですね〜。まいったなぁ・・・。」
ミッドウェーには正体不明の大型深海棲艦が陸上に鎮座しており、それを囲むように数十隻の深海棲艦が展開している。さらにその周りにも偵察艦隊などを含め、大艦隊が展開されている。その規模は沖ノ島以上だった。とても正攻法で落とせるところではない。
比叡は息を吐き出したが、そこで気が付いたように紀伊を見た。
「雲に紛れて接近させたのは正解でした。さっすがですね!」
「あ、いえ。そんな・・・。」
紀伊は頬を染めた。
「紀伊ももっと自信をもっていいよ。艦載機の扱いについては、もう私たち空母に遜色ないもの。」
「あ、ありがとうございます。それより・・・やはり深海棲艦たちはミッドウェー諸島を完全に掌握して根拠地にしているようですね。」
「ま、一筋縄ではいかない相手だよね。」
飛龍が肩をすくめた。
「でも、ミッドウェーを攻略できたら、もうノース・ステイトへの道は開けたも同然ですよね!」
清霜が言った。
「でも、その最後の関門が・・・・・。」
吹雪の言葉が沈んだ。何しろ前世の日本で無敵を誇った機動部隊が壊滅させられているのだ。おまけにその沈んだ当人たちの一人が今ここにいるとあっては嫌でもそれを思い出さないわけにはいかなかった。
「まぁ、あの時は戦略が一定していなかったからさ。ミッドウェーを落とすか、機動部隊を壊滅させるかで迷っていたんだもの。でも今度は最初っから決まってる。」
飛龍がこぶしを握りしめた。
「今度こそミッドウェーを落として見せる。必ず!!」
紀伊はその拳に、その眼に前世からの想いを読み取った。
「私もです。もう二度とあんな思いはしたくはないです。必ず勝って・・・勝って生き残ります!」
比叡の言葉に川内たち3人もうなずいていた。それを一人紀伊は見つめていた。
どの艦娘も度々見せるその闘志、その思いは紀伊には到底達することができない心境だった。以前はそれについていけない自分が置き去りにされたような思いを味わってきたが、今は少しずつ変わってきている。
(私も、この戦いを必ず制して・・・・未来をつかみ取る!!!必ず!!!!)
その思いが体の隅々まで広がっていき力がみなぎってきた。心に、頭に凝縮されていた思いが薄まったからなのだろうか、ふと別の想いが湧き上がってきた。
今回の偵察は、
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