第二十九話 巻き返し
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か・・・・うん、そうならいいのだけれど・・・・。」
一同は顔を見合わせた。比叡は顔を上げた。
「私、金剛お姉様たちと違って、旗艦役を務めたことがなかったんです。いつもお姉様たちの後にくっついてばかりで・・・・・。妹たちの方が私なんかよりずっとずっと優秀だって思ってましたし――。」
「それはちょっと違うな。」
飛龍が口を出した。
「優秀とか優秀じゃないとか関係ないよ。大事なのは経験だもの。そりゃあなたの方が榛名や霧島に比べれば経験は少ないだろうけれど、でも、経験を積んでいけばきっと妹や金剛に負けない旗艦になると思うよ。」
紀伊は横で見ていてじんわりと暖かな気持ちになった。普段はあまり飛龍と接することはなかったから、工廠に閉じこもりがちの飛龍について多少偏見を持っていたことは否めなかった。だが、こうして接していくと飛龍の本質が徐々にわかってきたような気がしていた。
「ありがとう・・・・。」
比叡はほおを緩ませた。
「じゃ、紀伊さん、飛龍さん、川内さん。お願いできますか?」
『はい!』
3人はそれぞれ別方向に滑り出すと、偵察機を発艦させた。
翼をオレンジ色に染めながら旋回し、偵察機は遠ざかっていった。
同時刻、南太平洋海上では大和以下の出撃艦隊が敵艦隊と交戦していた。が、すでに勝敗は決しつつあり、重巡戦隊以下が追撃戦に移りつつあった。
「敵は尻尾巻いて逃げ出しやがったぜ!!」
麻耶が息を弾ませながら報告した。
「ご苦労様でした。流石麻耶さん。近接戦闘の見事さは見ていて感嘆しました。」
大和は微笑んだ。
「ん。あ、当ったり前だろ!!なんてったってアタシは麻耶さまだぜ!!」
「ええ。」
半ば照れながらも誇らしげに胸を張る麻耶、そしてそれを温かく見守る大和を艦娘たちはうなずき合いながら見ていた。
「で、どうする?追撃するか?」
「いいえ、戦果としては充分です。ヲ級フラッグシップ改を3隻撃沈できましたし、戦艦以下に多大な損害を与えることができました。長門秘書艦からも追撃無用の命令は出ています。帰りましょう。」
「あぁ、そうだな。」
そばにいた鳥海はおやっと思った。普段の、そして最近の麻耶ならとくに戦艦に対してつっぱるところがあったというのに、今回はそれがない。そのことで胸を痛めていた鳥海は内心ほっと胸をなでおろしていた。
先日の高雄も、出撃の時は硬かった表情が、帰ってくるといつもの高雄に戻ってきていた。聞けば近接戦闘で戦艦2隻を撃破し、金剛たちを身を挺して救うことができたのだという。鳥海はそれを聞いて理解した。高雄の表情の硬さは重巡という艦種に戦艦たちと比較して劣等感を覚えていたからなのだと。そして先日の出撃後の晴れやかな表情は重巡としての役割を自覚できたからだったのだと。
今の麻耶も同じだった。その
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