第二十九話 巻き返し
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戦隊の一翼を担った艦娘を見た。第一航空戦隊の赤城、加賀とはまた違った雰囲気を持つ艦娘である。
横須賀に到着して時間があくと、紀伊は前世のことを良く知る艦娘にそれぞれの艦娘たちのことを聞いて回っていた。飛龍は前線での航空支援・戦闘のほかに工廠で新鋭機の開発に当たっているとのことだった。
「何をしていらっしゃるのですか?」
「ん?」
飛龍は顔を上げた。
「あぁ、これ。これは新型機の開発アイディアをまとめているの。震電っていう前世では実現できなかった迎撃戦闘機なんだけど、これがなかなかうまくいかなくてね。」
飛龍が示したノートには飛行機の設計図らしいもの、資材の配合等の計算式などが細かく記載されている。紀伊は目を見張った。
「すごい!とてもびっしり書かれていますね。」
「あなたたちが横須賀に来た頃に着手したんだけれど、いつになったら開発できることやら。開発に回せる資源にもそんなに余裕なくなってきたし。」
半ば自嘲気味に話しているが、どこか面白そうに話すのは開発主任としての仕事があっているからだろう。
「これが開発できたら、あなたにもプレゼントするから、楽しみに待っていてね。」
「はい!」
「ところで紀伊さん。」
「紀伊で結構ですよ。」
紀伊は微笑んだ。
「ありがと。じゃあ紀伊。少し未来の話をしてもいいかな?」
「未来ですか?」
聞きなれない単語に紀伊は戸惑った。
「うん。この戦いが終わったら、あなたは何をしたい?」
「何、を・・・ですか・・・。」
紀伊は戸惑った。艦娘として生まれた以上自分は常に深海棲艦との戦いの中にあるし、そうあるべきだと思っていた。それがなくなるときどうなるのかということは以前考えたこともある。だがその答えはまだ出ていなかった。
「まだわかりません。そんなことを考える余裕はまだなくて・・・・。」
「いつも戦闘戦闘ってわけじゃないでしょう?お茶したり散歩したり本読んだり料理作ったり。色々するじゃない。平和になったらそういう時間がうんと増えるだけだよ。」
「そうですね・・・・きっと私は戦いが終わってもここか、呉鎮守府に戻ってきます。なんというか、あそこが私の家みたいに思えるんです。みんなと一緒にいつまでも過ごしたい。それが私の願う未来です。」
「家族みたいなものだものね。そういうのいいよね。」
飛龍は目を細めた。
「飛龍さんは、何をなさりたいのですか?」
「私?そうだなぁ・・・・。」
飛龍は考え込んでいたが、不意に顔を上げてさらっといった。
「戦いが終わったら考えるよ。」
「あ、もうっ!ずるいです!」
思わず二人は笑いあっていた。
「絶対ですからね。聞かせてくださいね。」
「もっちろん!」
飛龍は片目をつぶった。
* * * * *
横須賀鎮守府秘書艦室――。
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