第二十九話 巻き返し
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くださいね。」
「みんな!」
伊勢が声をかけた。
「そろそろいくよ!」
時刻はまだ9時だったが、これから長い航海が待っているのだ。できるだけ早く出た方がいい。
双方の艦娘たちは幾度も呼び交わしながら、分かれていった。横須賀鎮守府の艦娘たちも三々五々鎮守府に帰投していく。その中を長門はある艦娘に近づいていった。
「比叡。」
長門が比叡を呼んだ。まさか自分が呼ばれるとは思っていなかった比叡は金剛と霧島につつかれてようやく気が付いた。
「ひえっ?なんですか、長門秘書官。」
「後で話がある。秘書官室に来てくれ。」
それだけいうと長門は陸奥のところに戻っていった。
「話!?話って、ああ長門さんっ!!」
肝心なことを聞けなかった比叡は不安いっぱいの顔で長門を見送っていた。
何しろ、比叡が名指しで呼ばれたのはこれが初めての事だったからだ。
* * * * *
同日の午後、横須賀鎮守府、ティールーム脇テラスにて――。
出撃の時を除き、毎週隔日には金剛型4姉妹がティータイムを楽しむことになっている。お茶は当番制であり、それぞれの当番が工夫を凝らしたお茶やお茶菓子を用意することになっている。
今日は金剛の番だった。長女自ら腕を振るったスコーンやパウンドケーキ、サンドイッチなどが並んでおいしそうな彩を白いテーブルクロスの上に展開している。
お茶も馥郁とした香りを立ち上らせながら純白のカップに注がれていく。
そんな寛いだ人と気が始まろうとしているのに一人浮かない顔をしている者がいた。
比叡である。いつもなら、金剛姉様の作った料理を真っ先にかぶりつく比叡が今日は手を出さないのだ。
「比叡、どうしたデ〜ス!?」
「せっかくお姉様がスコーンを作ってくださったのに。」
「食べないのですか?比叡お姉様。」
「・・・・・・。」
比叡はテーブルの上で落ち着かなさそうに手を組んだりほどいたりしている。いつもの比叡らしくないと他の三姉妹は顔を見合わせた。
「どうしたデ〜ス?何かありましたか?」
「それが・・・それが・・・・。」
比叡は思い切ったように顔を上げて、話し始めた。
話は半日ほど前、つまり呉鎮守府艦隊を見送った直後にさかのぼる。
* * * * *
横須賀鎮守府秘書艦脇小会議室――。
紀伊が入ってくると、すでに何人かの艦娘たちが待機していた。秘書艦の長門が黒板から顔を向けて、こちらに来てくれと促した。この数日前、紀伊は転属の指令を受け取り、第五艦隊の旗艦の任務を解かれていた。後任は近江だった。他の艦娘ならともかく、近江なら尾張をよく制することができる。紀伊は安堵して引継ぎを終え、ここにやってきたのだった。
「集まったな。」
長門は全員の顔を見渡した。
「呉鎮守府
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