第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#6
呪縛の死線 玲瑞の晶姫VS漆黒の悪魔
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機質な切断音を聞きながら、
フローラルピンクのスマホに耳に宛てた
淑女は、ホテルの一画で呆然と佇む。
そして。
「一体、何だったのでありますか?」
「溟濛」
嵐のように過ぎ去った一時に、ティアマトーすら驚きの声を漏らした。
【4】
スリットを通さずともドアノブに翳すだけで解錠される、ICタイプのカードキー。
パステルカラーで統一された、暖かさと快適さのにじみ出る清潔で現代的な室内。
オーク材を基調としたツインのベッドと卵形のテーブル、
座り心地の良さそうなアームチェアーも置かれている。
左隣の扉を開くと広々とした大理石のバスルームがあり、
洗面台の手入れや備品の管理も申し分ない。
風通しを良くする為バルコニーの引き戸をスライドさせ、
サイドボードに乗ったアンティークの民族人形脇にカードキーを置いた後、
淑女は部屋の中央で瞳を閉じ軽く息をついた。
「それにしましても、休む間もないとはまさにこの事でありますな。
“そのような場所” で息絶ゆるというのも不憫。
出てくるがいいであります」
無人の室内に凛冽とした声が充ち渡る。
ソレと同時に右斜めの位置にある冷蔵庫が 『内側から』 開き、
溢れ出る冷気と共に暗い影がズルリと這い擦り出した。
「……」
その影の正体は、顔は疎か全身の至る所に夥しい傷を負った、一人の男。
切傷、裂傷、割傷、刺傷、打撲傷、擦過傷、挫滅傷、
ありとあらゆる種類の傷痕はとても数えきれず
完治していないものもあるため炎症を引き起こし、
尚かつソコにダメージを受けたため後遺症を残している部分も在った。
傷は戦士の勲章というが、
この男の傷は戦いの 「攻防」 で出来たものではない、
無抵抗のまま一方的に甚振られた傷だ。
その優麗な風貌からは想像もつかない、
歴戦の修羅場の中で磨き抜かれた淑女の観察眼。
溝川よりも淀んだ瞳が、冷蔵庫の中に潜むという不気味な思考が、
そのまま男の異常性を表していた。
一体どのようにして入っていたのか、
ヒキガエルのような体勢で冷蔵庫から抜け出て立ち上がった男は、
女性にしては長身の淑女を高見から見下ろす程の巨漢。
三つ編みの荒れた黒髪を背に垂らし、
肥大した筋肉に密着したレザーパンツと
前を開いたノースリーヴのジャケットを着ている。
丸太のような両腕は勿論、露わになった胸から腹部に至るまで
例外なく傷まみれだった。
鼻をつく独特な体臭と、それ以上の血の匂い。
自分の血と他人の血、その両方が混ざり合って
何れかの区別も付かなくなった凄惨且つ残虐な気配が
男の躯から発せられていた。
「ククククク、 “マジシャンズ” の方から先
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