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STARDUST唐eLAMEHAZE
第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#6
呪縛の死線 玲瑞の晶姫VS漆黒の悪魔
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み寄る男の袖を、あの方が急かすように引いていた。
 船内でもかなりの量のワインを飲んでいた筈なのに(途中からラッパ飲み)
その上まだ飲もうというのか (それも朝っぱらから)
「……」
 些か以上に苛立たしい光景であったが、
しかし心の底から嬉しそうな少女の顔を悲しみで曇らせるコト等
優麗な淑女には出来なかった。
 なので代わりに。
「 “承太郎殿” 」
 そう言って振り向く無頼の貴公子に、淑女は確固たる口調で告げる。
「遊歩の随伴は 「許可」 致しますが、
くれぐれも節度ある行動をお願いするのであります。
ゆめゆめ、不適切な施設やふしだらな遊戯場等にあの方を誘引する事、
(まか)りなきよう」
 感情の色を殆ど表さず、長々しい台詞を淀みなくワンブレスで言い切った
ヴィルヘルミナは楔を打つような視線で承太郎を見据える。
 同じ血統のジョセフに向けるソレとは、
まるで対極に位置するモノだった。
「……」
 懇切丁寧な物言いの中に隠された、
ピリピリくる強張りに沈黙する承太郎の傍らで、
「ほら、早く行こう、承太郎。
モタモタしてるとおいてっちゃうわよ」
先走って戻ってきたシャナがグイグイと袖を引く。
「ルームナンバーは512。余り遅くなりませぬよう」
「うん! じゃあ行ってくるね! ヴィルヘルミナ!」
 そう言って吹き抜けの中央階段を昇っていく二人を、
淑女は澄ました顔のまま手を振って見送る。
 途中踊り場で振り向いた承太郎と眼が合い、一瞬の交錯の後。
(いつでも、来な……) 
(望む所で、あります……) 
 静かな闘気が一抹、互いの中間距離で弾けた。
「ふむ、では」
 取りあえず済んだ事に拘っても仕方ないので、
宛われた部屋に脚を向けるヴィルヘルミナに、
件の妖しい影が忍び寄る。
「どうやらシャナは承太郎と一緒に行っちまったみてぇだなぁ〜。
邪魔者がいな、イヤお互い自由になった所でどうだい?
プールで一泳ぎした後、食事でも……」
 背後からススッと近づいてきた男の言葉を、
彼女は空気のように黙殺した。
「……」
頑無視(がんむし)
 無言でしずしずと去っていく淑女に片手を伸ばしたまま硬直する男へ、
無機質な女性の声だけが冷たく残された。






【3】


 ハロゲンランプの優しく暖かな光が充ちる、豪奢なメゾネット。
 ベージュ、キャメル、オリーブ色を基調にした
オリエンタル風のモダンな内装が施され、
2方向の大きな窓から外の街並みが一望できる。
 その高級感溢れる香港でも指折りのホテル最上階、
ロイヤル・スイートルームのバーカウンターに
朝っぱらから突っ伏す女性の姿が在った。
 長い栗色の髪と深い菫色の瞳。
 着ている服は大柄
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