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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十八話 改革者達の戦い
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るわけではない。彼らも戦っているのだ、まだ始まったばかりだが帝国二百四十億の人間を相手に戦っている。いずれは全人類四百億を相手に戦うことになるだろう。
「今思えばカストロプでの改革を行なう前に“上手く行く必要は無い。今回は行なう事に意味がある”とエルスハイマーに言われましたが、実際にその通りだったと思います。閣下の仰るとおり、人を動かす事の難しさを思い知らされました」
「……」
カール・ブラッケの言葉には重みが有った。その重みを、余韻を確認するかのように沈黙が部屋を支配した。
帝国暦 487年 12月 9日 帝国軍病院 オイゲン・リヒター
病室は沈黙している。ブラッケの言葉の後誰も話そうとはしない。何処と無く話すのが躊躇われるような雰囲気があった。
ヴァレンシュタイン司令長官が襲撃された、意識不明の重態、そう聞いた私とブラッケは後をエルスハイマー、オスマイヤーに託し、急ぎカストロプを離れオーディンに向かった。
閣下の容態が心配な事もあったが、万一の事が有った場合、改革がどうなるのか見極めなければならなかった。リヒテンラーデ侯は、ゲルラッハ子爵は改革を継続する意思は有るのか?
幸い閣下は意識を回復されたが、カストロプからオーディンに着くまでの間の焦燥、不安をどう表現すれば良いのだろう。リヒテンラーデ侯もゲルラッハ子爵も貴族なのだ。何処まで改革に好意を持っているか分からない。その不安が常に我々を支配した。
必要性は理解しても好意は持っていないとなれば、改革そのものが何処まで行なわれるか……、不安定なものになりかねない。今更ながら我々改革派の後ろ盾になっているのは司令長官なのだということを思い知らされた。
「閣下、心配な事が一つあります」
照れたような表情でブラッケが沈黙を破った。自分の言葉が沈黙をもたらした事を恥ずかしがっているらしい。ブラッケにはそんな照れ屋なところがある。
「?」
ヴァレンシュタイン司令長官はベッドで横になったまま目で問いかけてきた。顔色は余り良くない、かなり出血して危なかったと聞いている、その所為だろう。
「改革を進めるには人が足りないと思います。帝国には改革を考えた官僚は殆ど居ません。今は未だ我々だけで足りるかもしれません。しかし改革が進み、多岐に広がれば改革を推し進める人材が足りなくなるのは目に見えています」
「……」
ブラッケの言う通りだ。困った事に帝国では社会改革は政府上層部から忌諱される存在だった。当然だが官僚たちもそれに追随している。つまり社会改革を行なう人間、そして我々の後を継いで改革を進めていく人間が決定的に不足しているのだ。
「教育し、それなりの人材を作るのには時間がかかります。もちろん怠るわけにはいきませんが急場には間に合
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