二十一話:女性達の会話
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く清姫。
この策は完璧な策だ。誰も傷つけることなく、二人に利益が生じる。
断る理由などない。しかし、彼女の返事は意外なものだった。
「ですが、お断りします」
彼女の返答はNOであった。
「……なぜですか?」
「この清姫が最も嫌いなものは嘘です。真実を伝えずに、そのようなことをするのはだまし討ちに等しい行為。同じ土俵に上がる前に、敵を排除するなどもってのほか。正妻たるもの、小細工などせずに、どっしりと構えて横綱相撲をすればいいのです」
どこか威厳に満ち溢れた言葉にブリュンヒルデは目からうろこが落ちたような気分になる。
そのためか、清姫の中では既に自身がぐだ男の正妻になっていることに、突っ込みを入れてくれる人間はいない。
「そうですね……私が間違っていました」
「いいんですよ。間違いは誰にでもあるものです。ただ、それを認めないのが嘘なのですから」
ニコリと笑みを浮かべて、ブリュンヒルデの手を取る清姫。
美しい友情のように見えるが、想われる側からすれば傍迷惑なだけである。
「そもそも、妻は夫の三歩後ろを行くものですもの。妻が引っ張るのではなく、あくまでも夫を立てなければダメです」
「はい。死後も、冥府の館まで追っていくぐらいでないと、ダメですよね!」
「あんた達、さっきから、なに恐ろしい話してんのよ!?」
今まで無視をしていたが、物騒になってきたので、ツッコミを入れるジャンヌ・オルタ。
因みに、ブリュンヒルデが、ぐだ男を危険視している理由には気づいていない。
『まあまあ、いつものことだから落ち着いて』
「死んだ目で言われても、説得力ないんだけど……」
死んだ目で、いつものことと言い切るぐだ男に、憐みの視線を向けながら座りなおす、ジャンヌ・オルタ。
その視線が、なぜか無性に泣きたくなるものだったので、ぐだ男は無理矢理、話題を変える。
『そういえば、みんなは宿題やってる?』
「ええ、当然です」
「私も、少しずつですが」
「そりゃ、あんなの、少しずつやらないと終わるわけないでしょ」
やっていなさそうなジャンヌ・オルタも含めて、やっているという返答にぐだ男は汗をかく。
彼にとって、夏休みの宿題とは最後の数日でやるものなのだ。
「もしかして、あんた一切手をつけてないの?」
『ま、まだ、時間はあるし』
「そう、よかったら見てあげましょうか」
『え、ジャンヌ・オルタが?』
「ええ。ただし、あんたが間に合わなくて絶望する顔をだけど……ふふふ」
邪悪な笑みを浮かべて、ぐだ男を見下すジャンヌ・オルタ。
人の不幸は蜜の味とはよく言ったものだ。
必死に努力する相手に、横からちょっかいをかけて、遊ぶのが彼女の趣味なのだ。
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