望み喰らいし魔法使い
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た筈の紫の皹がまた広がっていた。
―ああ…そうか…そうだったな…。琉妃も…親父もお袋も…もうこの世にはいないんだったな…。
それと同時に家族がファントム化…既に実質死んでしまったと言う現実をも思い出し、先程まで焦っていた表情から一転して目が虚ろになり、諦めた様なそれに変わる皇巳。
『ジャルルルル…シャアアアアァァァァッッッッ…ックンッッ!!』
そんな皇巳の弱った精神に呼応したのか、シーサーペントは琉妃や両親を一気に呑み込んでしまい、またも激突、破壊を続けている。しかし、皇巳はそれを無抵抗のまま虚ろな瞳で見ているだけだった。そして…
『ジャルルルルアアアアァァァァッッッッ!!!!』
今の激突で皇巳のアンダーワールドはまるで硝子の様に完全に破砕してしまい、足場を失った皇巳はそのまま一点の光も無い闇の中へと沈み落ちて行く…。
―遂に何もかも砕けちまったか…。だが…もういい…。今更不様に生き残るなんて御免だ…。
アンダーワールドが失われても尚…いや、だからこそなのか、皇巳は最早「生きる」と言う気持ちすら消え失せてしまっている。もうじきファントムと化してしまうのにも関わらず…。
『ジャルルルル…よもや貴様からは希望の欠片すら見当たらぬ。このまま儂に喰われ…儂が「貴様」となろう…!!』
そんな皇巳の眼前に、シーサーペントが彼の存在を奪うと人語で話し掛けつつ、再びその巨大な口を大きく開く。
当然ながら、この皇巳は本人では無くその精神である。それをシーサーペントが喰らった瞬間、王御皇巳と言う人間は完全に死に、その肉体や記憶の全てを奪われてしまう。最早彼を救う手立ては無い…。
―…ゃん…。お…ん…。
―!!
…がその時、皇巳の耳にもう聞く事の無い筈の声が聞こえた瞬間、虚ろだった瞳がカッと見開き耳を傾けながら周囲を見回す。
―琉妃…この声は琉妃か!?まだ生きて…!!いや、そんな訳無いか…。
声の主が琉妃だと知り周囲を見回している皇巳だが、暫くして「妹がまだ生きている」と言う考えを捨て去り、動きを止めて眼を閉じる…。
―お兄ちゃん…!!
―チッ…っせぇなぁ…!!?あ…あれは…!!?
尚も自分を呼ぶ琉妃の声に苛ついた皇巳が再び眼を開くと、その向こう側には淡い水色の光が見えた。それに耳を傾けると声はより鮮明に聞こえる為、皇巳はこう推測する…。
―もしかして…琉妃はまだ死んではいないのか…!!?
確かに琉妃は既にマーメイド…ファントムとして変わり果てている。だが、その魂はまだ完全に消滅していないのかもしれない…。そう考えた皇巳はその光の先へと向かおうとするが…
『ジャルルル…無駄な足掻きはよせ…!!』
「てめぇ…!
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