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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第33話『心配』
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ついつい、冗談めかして軽く礼をしてしまう。

皆の沈黙と視線の痛さに、一旦教室を出ようとしたその時・・・



「三浦君、大丈夫?!」

「へ?」


静寂を貫いたのは一つの声。
透き通るようなその声の主は、俺を見て心配そうな表情をしていた。


「柊君」


俺は、その人物の名を呟く。
彼はその呟きに頷くと、こちらに歩み寄って来た。


「怪我、大丈夫なの?」

「あ、あぁ…大丈夫だよ」


一瞬返答に迷ったが、心配を掛けないよう無難な言葉を選択した。
すると、クラスの皆の表情が安堵へと変わり、張りつめていた空気が氷解する。


「ったく…。お前って、意外に皆から心配されてたりすんだぞ?」


続いて聞こえた声。
その声のした方向を向くと、意地悪く笑う大地の姿があった。


「一応、学級委員って立場でもあるし」

「それ抜けたら、俺は心配されなくなるのかよ!」

「ははっ、冗談冗談」


外の雨音にも負けない位の大地の笑い声。
その平和な光景にたまらず笑みを溢す。


「ホントに大丈夫だったの?」
「超ヤバいって聞いたけど…」
「俺も肩貸すぞ?」
「心配させんなよ、学級委員長」
「無事で何より」


そんな俺に続々と掛けられたのは、クラスの皆からの心配の声。何かのドッキリかと疑ってしまいそうになるほど、その心配は大袈裟な感じがした。
だけど皆の顔を見ると、それが本心からの言葉だと気づく。


「皆…ありがとう」


普段なら恥ずかしくて言えない言葉。
だが今の俺の口からは、その言葉も易々と出てくる。
心配してくれるなんて…嬉しい限りだ。自然と眼に涙が浮かんでくる。



「ところでさ・・・」



しかしそんな俺の感情を遮ったのは、どこからか上がった暗くも明るくもない口調の声。
ただただ、気になる事を質問するような…そんな感じだった。
そして、その口は続きを話す。


「魔術部って、何なの?」

「…!?」


余りにもストレートな内容で、俺はビクッと反応する。隣の暁君も似た反応をした。

いやでも待て、焦る必要はない。
こういう時用の魔術部共用の文句が有るではないか。



「何って…秘密だよ」


「え、秘密…?」

「そう。全てが謎に包まれた部活動、それが魔術部なんだ」


俺は躊躇いもせずに言った。口は自然と笑みを浮かべ、表情はきっと清々しいものとなっているだろう。
だからこそなのか、相手のポカンとした顔を見るとつい、笑いが込み上げてしまった。


「…なんてね」


お気楽な様子で言った俺だったが、内心は「セーフ!」を連呼していた。

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