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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十七話 新たな火種
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ム伯は誤ったな、沈黙したシャイド男爵を見ながら思った。本来のミューゼルのままで居るべきだったのだ。門閥貴族の一員であるローエングラム伯爵家など継ぐべきではなかった。
そうであれば彼の立場も今よりはるかに安定したものになっていたかもしれない。ローエングラム伯爵家を継いだ事があの男を、門閥貴族からも平民からも距離を取らせることになった。
その点ではヴァレンシュタインは見事なものだった。元帥杖授与式で貴族になる事を拒否した。あれはどんな言葉よりも彼の立場を強化しただろう。平民達の希望として……。だからこそ彼を殺さなければならない、我等が生き残る可能性を僅かでも見出すために……。
宇宙暦 796年 12月 8日 ハイネセン 宇宙艦隊司令部
ドワイト・グリーンヒル
「帝国の状況も今ひとつはっきりせんな」
「そうですな」
面白くなさそうに話すビュコック司令長官に私は相槌を打った。確かにはっきりしない。
「大丈夫かな、彼らは」
「まあ、あれだけ言ったのです。大丈夫だと思うのですが……」
「だと良いがな……」
何処か不安そうなビュコック提督を見ながら彼らのことを考えた。彼ら、第三艦隊司令官ルフェーブル中将、第九艦隊司令官アル・サレム中将、第十一艦隊司令官ルグランジュ中将。今回のフェザーン方面派遣軍の司令官達だ。
当初、フェザーン方面派遣軍の目的はフェザーン回廊の中立を守るためだと言った時、彼らはそれに特別不服を唱えなかった。しかしフェザーンへ向かう途上、帝国からヴァレンシュタイン元帥重傷の報告が入ると彼らの態度が変わった。
場合によっては実力をもってしてもフェザーン回廊を守るべし。それが彼らの主張だった。一体何を考えているのか、捕虜交換を帝国との間に約束している今、いかなる意味でも帝国との間に戦闘行為は慎むべきなのに。
「やはり不満があるのでしょうか? 我々はシャンタウ星域で敗戦したにも関わらず昇進し軍中央にいます。しかし彼らは艦隊司令官のままです、面白くないのかもしれません」
「それも有るだろうが、やはりヴァレンシュタイン元帥重傷の知らせが大きいじゃろうな。彼らは帝国が混乱すると見たのだろう。帝国軍の侵攻部隊もどうなるか分からんと見た……」
「有り得ることでは有りますが、ヴァレンシュタイン元帥は意識を取り戻しました。それは彼らも分かっているはずです」
私の言葉にビュコック司令長官は頷きつつ答えた。
「何処かでヴァレンシュタイン元帥の鼻を明かしたい、そんな気持ちがあるのだろう。それと我等を見返したいという思いも有ると見た……」
「……なるほど、厄介ですな」
「フェザーン回廊を制圧すれば、同盟はイゼルローン、フェザーンの両回廊を押さえる事になる。同盟の安全を確保するためには
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