第6章 流されて異界
第152話 冬の花火
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安らぐ世界。
しかし、今は――
「オマエさんは、花火を一緒に見る為に、こっちに来たのと違うのか?」
視線を花火の方向から彼女へと向ける俺。その微かな動きが幾重にも重なる波紋を湯面に発生させ――
彼女が向けていた視線と俺のソレが交わる。
つまり、未だ彼女は花火の方向へと向ける事もなく、ただ一途に俺を見つめるだけであった。……と言う事。
「一応、言って置くけど、俺の瞳に映っている花火を見ている……なんて言う、ギャグはここでは無しにして貰えると助かるかな」
くだらない。本当に、くだらない台詞を口にする俺。おそらくハルヒなら、「くだらない。有希がそんな事を言う訳ないじゃない」……と言う台詞を口にするはず、と言うレベル。
当然、本当にそんな事を心配していた訳ではない。ただこの時、彼女の真摯な瞳に吸い込まれたように自らの視線を外す事が出来なくなった、そんな気がしたから……。
完全な黒ではない。濃いブラウン系に属する……、しかし、何故か水を連想させる彼女の瞳から。
軽口で対応をしたとしても、それで現状を変える事など出来はしない。彼女の瞳を正面から受け止めた俺の瞳は、視線を逸らす事も出来ず……。
そう、この時の彼女は何時の間にか正面から、更に俺と同じ視線の高さで――
俺の頬を両手で挟み込む有希。まるで霞に触れようとするかのような手つき。普段の少し冷たい指先ではない、非常に温かな指先で優しく、静かに触れる。
そして絡み合う視線の先。彼女の瞳は――
「くちづけの時、鼻がどう言う形になっているのか興味がある」
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