暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第152話 冬の花火
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学的な方法で直るか、それとも直らないのかは微妙な所なのですが……。一応、術で強化は行っていたけど機械式の腕時計に強力な雷を落とした後に、炎でベルトがダメになって終ったので……。
 もっとも、そもそもあの腕時計は革製のベルトがデフォなので、其処にわざわざ金属製のベルトを選ぶとも思えないのですが。この辺りは時計の種類を少し調べたら分かる程度の情報ですから、いくらハルヒでも、そのぐらいの事は調べるでしょう。
 ……まさか純正のベルト。メーカー製の、高校生がプレゼントとして用意するには少々高価なベルトをわざわざ取り寄せるとも思えないのですが。

 尚、俺に金属アレルギーがあると言うのは少しの欺瞞。より正確に言うのなら、普通の人間と比べると強い木行が現われ過ぎている俺に取って金行に属するすべてのモノは相克。故に苦手としている。そう言う事。
 故に、普通の人間のアレルギーのように特定の金属に対して発現するのではなく、金属すべてに対して発現する、と言う事になる。

 これで彼女の意識の誘導は出来たでしょう。少なくとも、この真冬の旅行に水着持参と言う事は考えられない。更に、その水着の調達が俺に出来る可能性がある事を思い付かせなければ、今回のこの話はこれでおしまい。
 おそらく、言い篭められて仕舞ったハルヒは、女湯の方で小さな声で何か文句を言っているのでしょうが、それは何時もの事。そもそも、花火見物の為だけに男湯の方に移動する、と言い出して、それを最初から全否定しなかっただけでも感謝して欲しいぐらいだから。
 俺と同じレベルの常識人の朝倉さんには最初から反対されたのだから。

 そう考えながら、
 壁から移動させた視線の先では未だ無数の花が咲き、そして儚く散っていた。その様は、この無意味に軽い感じのポンポンと言う音がなければ異世界の出来事。
 さっさと消音モードに切り替えて、外界からの余計な雑音をシャットアウトすべき状態。

 ハルヒじゃないが、花火と言う物は。いや、星空や映画などにも言える事なのだが、何処で見るのか、よりも、誰と見るのか。こちらの方が重要となる。
 つまり、何やかやと屁理屈を捏ねてみたのだが、簡単に言って終えば、俺はハルヒと共に花火を見るよりは、こうやって有希と共に見る花火の方を選択した。そう言う事。

 刹那、再び周囲から余計な音が排除された。静寂と枯淡に支配されたふたりだけの世界がまた創り上げられたと言う事。
 その無音……完全なる無音と言う訳ではなく、注がれ続けるお湯の発する音、腕の中の彼女の微かな吐息。それに、生命の発する鼓動などは確かに存在する優しい世界。

 ただ……。

「なぁ、有希」

 相変わらず、俺から離れようとしない少女に対して話し掛ける俺。彼女との間に発生する静寂の世界は俺に取っては心
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