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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第152話 冬の花火
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 そりゃ、まぁ、そうなんだけどさぁ。
 少し歯切れの悪い答えが壁の向こう側から聞こえて来る。ただ、どうでも良い事なのだが、風呂の壁を挟んだ会話と言うのも、それはそれなりに趣があるような気もする。
 何となく……なのだが、俺は独りではない。何処かで俺と彼奴は繋がっているのだな。そう感じさせられるぐらいには。

「ねぇ――」

 何か、不公平よね。そう言う呟きが聞こえた後、少し彼女の声のトーンが変わる。何と言うか……探るような雰囲気と言うべきか。
 う〜む。どうも、ロクでもない事を思い付いた……と言う雰囲気なのだと思うのだが。

 だとすると、これは俺の反応を――

「これからそっちに行くから準備して起きなさい」

 ――試そうとしているのか。そう考え、次にコヤツが言い出しそうな台詞を幾つか思い浮かべる俺。その際中に吐き出された言葉。
 成るほど。誰に見せると言う訳でもないのだが、それでも少し首肯いて見せる俺。大丈夫、この言葉は既に想定済み。取り敢えず、普段通りのハイテンションで押し通そうとはしているけど、先ず俺に声を掛けてから動き出そうとする辺りに、現状でコイツの限界があるのだと思う。

 第一、彼奴が男湯の方に来るのに、一体何の準備が必要だって言うのだ?
 ……有希を隠せ、と言う事なのか?

 ちょっと涼宮さん、あなた女の子なのよ! ……と言う朝倉さんの声と、おろおろとするばかりの朝比奈さんの意味のよく分からない声。有希の声が聞こえないのは当たり前として、万結も我関せずを貫いているのでしょう。彼女が女湯の方に居るのは気配的に間違いないのだが、このハルヒの突拍子もない申し出に関して彼女の反応を感じる事はなかった。

「準備って、俺に風呂から出て行けと言う事なのか?」

 まぁ、少々面倒臭いが、身体も頭も洗ったから、風呂から上がるのはやぶさかではないけどな。
 出来るだけ面倒臭げに聞こえるように、そう答える俺。大体、今、この男湯にハルヒに踏み込まれるとかなり問題がある。そう、本来なら俺一人切りのここに、何故か存在する長門有希。更に、今の彼女は俺の太ももの上に横座りの状態。
 もしも、この状況を誰か知り合いに見られたのなら、ここから先の展開を想像するのは恐ろし過ぎて出来ない……と言うしかない状況。

「そもそも、ハルヒが温泉に入るのに、水着を着て入るような人間だったとは思わなかったが、まぁ、その辺りは個人の信条やからとやかくは言わない」

 それでも、俺が上がるまで。それぐらいの時間は待ってくれてもええやろう?
 出来るだけ呆れた、と言うイメージと、否定的な雰囲気を言葉の端々から(にじ)ませながらも、言葉を続けた俺。

 しかし、その俺の言葉に、一番近い場所に居る少女から非常に否定的な気配が。

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