Side Story
少女怪盗と仮面の神父 31
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備を固め直せ! 全方位からの攻撃に備えよ! 来るぞ!」
「え? わ、っ……!」
苦痛に耐えるような表情のハウィスへ茫然と視線を送っている最中、剣を抜いたベルヘンス卿にいきなり正面から抱え込まれた。ほぼ同時に、半歩後ろでドカッと重たい音。弾け飛んだ複数の小石が、ふくらはぎをピシピシと打ち付ける。
小さく鋭い痛みを何事かと振り返れば、海上では使い勝手が悪そうだと思っていた珍しい二枚刃の銀斧が、地面に深々と突き刺さっていた。
昼間に引き続き、またしても青年に命を救われたらしい。
「……ありがとうございます」
「君は時々、莫迦みたいに暢気だな! 礼を言ってる場合か!?」
失礼な。「暢気」はアーレストの専売特許だ。
「言える内に言っておこうかと」
「こんな場面で不吉な物言いは止めてくれ!」
悲鳴に近い怒声を上げつつ、ベルヘンス卿の右腕が斜め横に白い光の尾を引く。カカカッと連続して軽い音が聞こえたかと思えば、細長い棒が数本、足元へ落下した。投げ斧の次は弓矢と来たか。本物の人殺し集団だけあって、武器の種類は豊富に取り揃えているようだ。
青年の腕の中で騎士達を横目に見れば、各々構え直した剣で飛来する危険物を相手に格闘している。暗闇で足場も悪く、相当やりにくいのだろう。動きに微かな躊躇いが混じっていて、とても危なっかしい。
それでも彼らは一応、騎士の位を授かった武人だ。マーシャルとイオーネの打ち合いほど熾烈ではないが、何処から来るか判らない攻撃を悉く躱してる時点で、ミートリッテが手出し可能な範囲は軽く凌駕してる。
(どうする? 私を痛め付けてハウィス達を苦しめるのがイオーネの目的なら、私は此処から逃げたほうが良いの? ……ううん、駄目だ。この人達は振り切れたとしても、相手方にはアーレスト神父が居る)
アーレストが相手でも、全力疾走なら追い付かれない自信はある。
が、現時刻、真っ暗な森の草木はミートリッテにとって障害にしかならず、かと言ってそれらを避けて河岸沿いを降っても、転がっている石に足裏の傷が刺激されて全力は出せそうにない。
結局、どちらへ行っても反則に近い優れた夜目を備えた化物を撒く材料が不足してる。
(マーシャルさんを助けてくれたし、完全な敵とは違うんだろうけど……でも、現状ではあの人が一番厄介だ。どうにかして退けないと)
逃げるのは得策じゃない。寧ろ、単独で騎士達の傍を離れては確実にハウィス達の足を引っ張ると判断し、大人しくベルヘンス卿に護られながらもアーレストの動向を観察してみる。
と。
「!?」
髪の次はシャツの裾を丸めて捩り絞っているアーレストの遥か向こう……河を挟んだ崖側の岸辺で、何かがきらりと光った。
ほんの一瞬の輝き。
けれど、ミートリッテの全身に冷
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