蒼き君
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に、渋々従って振り返る。彼女の琥珀色の目がこちらをじっと見つめている。
「名前を教えてほしい」
「……名乗るようないい名前はしていないよ」
「それでも、教えて」
明確に拒否をしても彼女は引こうとせず、琥珀の瞳により強く光を籠めて迫ってくる。その姿にどこぞのアホの姿が被るのが、ますます持って不快だった。あんなの一人もいれば十分だと言うのに。
小さくため息を溢す。確かに名前を教えるだけなのに強い態度で否定するのもおかしなものだ、もう価値のない小説から僕の名前が記載された図書カードを出して彼女へと投げ飛ばす。
「ついでにそれ、カード置き場に返しておいて」
「……わかった」
少し強く出すぎただろうか、彼女の声はさっきのような力はこもっていない。しかしお互いに別のクラス、諸事情で会うことはあるだろうが僕は踏み込むつもりは毛頭ない。小学生がいうのもあれだが、僕たちはビジネス上でだけ成立するようなそういうドライな関係だ。それが相応しいし、それ以外で僕たちの関係が立証されることはない。
少し重苦しくも感じてきた部屋の空気に耐えきれずドアを開け退出しようとすると、後ろで椅子を引く音が聞こえた。
「私はっ、美遊。美遊・エーデルフェルト」
「……」
彼女の名乗りは成立することはないし、そもそも名乗った理由そのものが成立していない。自己紹介とは、互いに名乗ってこそ意味があるものだからだ。僕は名前を教えはしたが名乗っていない。だから僕にとって彼女の名前など至極どうでもいい、というかさっきのネタバレでかなり苦手意識を植え付けられたから出来るのであればあまり関わらずに生きていきたい。
しかし、やはり引っ張られるものだなと思う。あの馬鹿のせいにしておこう。
「覚えとく」
今度こそ返事を待つ気も、新しい言葉を聞くつもりもない。
僕はドアを閉めた。
◆◆◆
今日という日は散々だったのではないだろうか、と重くのし掛かる思考で愚痴を溢す。
始まりは深夜に遡る。戦いの末に止めをさせたんだと彼と喜び舞い上がっていたらそれは見事なフラグ、あの女の人は最後に残っていたであろう僅かな力を全て振り絞って死力の攻撃――後でルビーやサファイアが言っていたが、宝具と呼ばれる必殺技を繰り出そうとしていたらしい――を繰り出そうとしていた。私は何が起こるのか、何故そんなにルビーや凛さんが慌てるのかが理解できず、ただ座り込んであたふたとしていただけの時、アイツは動く。
実は魔法使いであったらしい彼は短い言葉で魔法を繰り出し、女の人の集中をきって時間を稼ごうとしていたが、それが逆の結果を呼ぶ。女の人は宝具を二つ持っていたのだ、ルビーは魔眼と呼んだ不思議な目は相手の動きを止めるすごく強い力を持ってい
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