最終話 罪と罰
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顔を見れば、わかる。君はただ、私の魂を救いたかったのだと。バルキーテに唆されるまま『シン』と成り果て、父上とシュバリエルに牙を剥いてしまった、私の魂を」
「……」
「確かに……私は、許されないことをした。死を以てしても、償えぬ罪だろう」
すると、彼は自分が持っていた二本の剣を拾い――ダタッツの傍らを通り過ぎると、屋上の中央に勢いよく突き立てる。まるで、今日までの自分に墓標を立てるかのように。
ダタッツを名を改めた伊達竜正のように、己の全てを、改めるかのように。
「だが、だからこそ。今はただ生き抜いて――この罪を贖わねばならない。だから、そのチャンスをくれた君に、ありがとうと……そう、言いたいんだ」
「……くっ……」
視線を合わせることなく、背中越しの優しげな声色に触れ。ダタッツは、肩を震わせる。
――誰よりも、望まずして人を殺めてきた彼にとって。殺めた本人から送られた、その言葉はあまりにも眩しく、温かい。
救うために殺す、殺すことで救う。そんな矛盾した正義の中にも――確かに。生きていて欲しい、本当の意味で救いたい。そんな純粋な願いが、息づいていたのだ。
それゆえに。アルフレンサーから送られた感謝の言葉は。
ダタッツの内側に生きる伊達竜正という男が、何よりも求めていたものだったのかも知れない。
「だからどうか――その歩みを、止めないでくれ。殺さずして救える命は、今もきっと……君の助けを、待っている」
「アル、フレンサー……」
「恐れないで、ダタッツ。私も、大勢の帝国騎士を殺めてきた。……例え、君がいつか地獄に堕ちるとしても。その境地へ向かう方舟には、私も相乗りしよう。――約束する」
死を迎えた後も、共に罪を背負って行く。その宣言に救われた、ダタッツの想いを映すかのように。豪雨は終わりを迎え――天から、案が去って行く。
闇の中にいた二人に、降り注ぐ快晴の空。太陽の輝き。それは港町全てに広がっていき、この町に訪れた夜明けを物語っているようだった。
「……」
そして、満身創痍の身でありながら。屋上まで登り、事の推移を見守っていたグランニールは――ふと、屋上から一望できる港町の情景を見遣り、その果てにある港に視線を移す。
そこには、豪雨が呼んでいた荒波に飲まれ、転覆している海賊船の姿があった。使命を果たした方舟は、太陽の煌めきを浴びながら、永遠の眠りへと沈んでいく。
「……終わったのだな。……なぁ、アルフ」
そんな船を。次男を。長男を労うように。老境の武人は腰を下ろすと、平和の到来を告げる青空を見上げた。
この空の向こう――沖の彼方には、彼らを祝福するかの如く。艶やかな虹が、彩られている。
◇
「ふぅ……んーっ!」
町民達
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