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ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
最終話 罪と罰
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ったシンを暫し見つめたダタッツは、もう一度踵を返すのだった。

「……終わった」

 そして――その一言が、呟かれた時。

「そうだな」

「……ッ!?」

 聞き覚えのある、凛々しい声。その記憶を揺さぶる一声が、ダタッツの背に伝わる。
 表情を驚愕の色に染めながら、再び振り返る彼の目には――銅の剣を引き抜き、立ち上がる鉄仮面の姿があった。

 だが、ダタッツが驚いたのは、今の一撃を受けても生きていたことではない。

 ――シンが。流暢に。喋っている。

「こうして、顔を付き合わせるのは五年振りになるのか。……帝国勇者」

 否。
 その一言と共に鉄仮面を脱ぎ捨て、金色の髪と碧い瞳を露わにした彼は、もはや今まで戦っていた「シン」ではない。

 五年前に戦死した、王国騎士アルフレンサーだ。

 ◇

 降りしきる豪雨の中。五年の時を経て再会した二人の剣士は、寸分たりとも目を逸らさず互いを見つめていた。
 だが、二人の手に剣はなく――その眼差しも、かつてのような戦意に溢れた色では無くなっていた。

「……君の技で、首を斬られたせいかも知れないね。狂気のままに、頭に上っていた血が抜けて――楽になった」
「アルフレンサー……」

 先ほどまでとは別人のように、穏やかな面持ちで首をさするアルフレンサー。その首からは、すでに出血が止まっているようだった。
 そんな彼の、どこか儚げな表情を見遣り、ダタッツの貌も憂いを帯びる。

 ――「帝国勇者」として力を振るっていた自分に斬られた人間は、死ぬか狂うかの二択しかない。
 だが、狂ったといっても自我が完全に失われるわけではなく。後で正気に戻ったとしても、その間に自分が起こした行動は、全て覚えている。

 事実。過去にダタッツの手で狂気から目覚めた騎士達は、自分達が狂乱の果てに民を殺めていた事実に絶望し、介錯を願った。
 自ら死を望まざるを得なくなる、その苦しみはいかばかりか。察するに余りある絶望の味を感じさせないためには、もはや狂気が覚める前に「介錯」するより他はない。

 その一心で放った飛剣風と、飛剣風「稲妻」だった。だが、その二度に渡る必殺技を以てしても、とうとう「シン」を討ち取るには至らず、彼の中に眠っていた「アルフレンサー」を呼び起こしてしまった。
 一度は殺めてしまったばかりか、救済のための介錯にすら失敗し。ダタッツは己の無力さを噛み締めるより他なかった。

 だが。

「……ありがとう、帝国勇者。いや、今はダタッツと呼ぶべきか」
「……!」

 記憶をそのままに自我を取り戻したアルフレンサーから出たのは。罵声でも哀願でもなく――感謝だった。
 思わず顔を上げるダタッツに、彼は穏やかな笑みを浮かべる。

「君の
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