最終話 罪と罰
[4/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
り速く、懐へと踏み込んだ。
そして、地に沈むかの如く体勢を落とし、腰を捻り。右手に構えた銅の剣を、矢のように引き絞る。
「帝国式投剣術――飛剣風ッ!」
その反動を駆使し。矢にも音にもまさる速さで、銅色の剣が打ち出された。
彼が放つ一閃は、一瞬にしてシンの鉄仮面と鎧の隙間――首の空間に突き刺さり。豪雨を押し返さんとするかの如く、天へ向けて血飛沫が噴き上がる。
「……!」
悲鳴を上げる間も無く、膝から崩れ落ちて行くシン。この巨体が倒れれば、ついに五年に渡る親子の殺し合いも終焉を迎える。
――家族を手に掛ける苦しみを、誰も背負わずに済む。
それが、帝国勇者が掲げるシン殺しの御題目であった。如何なる道理があろうと、人を殺めることなど――本当は、許されるはずなないのに。
(アルフレンサー……)
だが。
倒れゆくシンを見遣り、戦いの終わりを確信したダタッツが、踵を返した瞬間。
「オ、ゴッ……!」
「……なッ!?」
背に響く苦悶の声に、思わず振り返ってしまった。驚愕の色を表情に滲ませるダタッツの眼前では、首に突き刺さった銅の剣を抜こうともがく、シンの姿があった。
天を仰ぎ、台座に刺さった聖剣の如く突き立てられた銅色の剣。その刃を掴み、懸命に引き抜こうとのたうちまわっているのだ。
その鬼気迫る光景に、ダタッツは信じられない、と言わんばかりに目を剥いた。
必殺の勢いで放った飛剣風。五年前より遥かに速く、遥かに鋭いその一閃を以てすれば、今のシンでも苦しませず殺せる。
そんな確信を持って放った一撃だったはず。手心など加えた覚えはない。
「……!」
ふとダタッツの目に、シンの膨張した両腕が留まった。狂気の影響で人間に本来備わっているリミッターを失い、筋力が膨れ上がっている。
その余波が首の筋肉にまで及び、その肉の壁が飛剣風を阻んだのだとしたら……。
「クッ……ならば、これで今度こそ終わりだ! アルフレンサーッ!」
自分の浅はかな算段で、悪戯に苦しめてしまった。その呵責に苛まれながらも、ダタッツは次の一閃で今度こそ終わらせるべく、地を蹴って高く飛び上がる。
「帝国式ッ……対地投剣術!」
そして、喉に突き立てられた剣をさらに押し込むかの如く。その柄頭を、強烈な飛び蹴りで踏み潰すのだった。
「――飛剣風『稲妻』ァァァッ!」
一切の容赦もなく、ダメ押しで突き刺さる一閃。その衝撃に押し倒されたシンの巨体が屋上の床に叩きつけられ、彼を中心に広大な亀裂が走った。
とどめの衝撃力を物語る、その光景が広がり――天を衝く轟音が止んだのち。ぴくりとも動かなくな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ