最終話 罪と罰
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はこのシュバリエルが許さん!」
「し、しかしシュバリエル様……」
「くどいッ! ――この町を悪戯に血で穢すことこそ、断じて許されないことだ」
「……!」
ダタッツが誰一人殺さなかった理由。それを考えた先にシュバリエルが決めたのは、彼が望まないであろう結果を回避することであった。
その言葉に込められた願いを、沈痛な声色から汲み取った町民達は互いに顔を見合わせ、やがて毒気を抜かれたように両手を下ろす。
そんな彼らの様子から九死に一生を得たと悟ったバルキーテは、自身の前に立つ凛々しき弓兵の眼差しを浴び、慄くのだった。
「……そうだな? バルキーテ」
「は、はひぃぃい……」
戦意もちっぽけなプライドも、全てを失ったバルキーテは憔悴し切った表情で頷く。そうしなくては殺されると判断したのだろう。
どこまでも哀れな親玉の末路に、弓兵は再びため息をつく。そして父の運命を案じるように、その視線を屋敷の方向へ移すのだった。
(父さん……ダタッツ……)
やがて――その時。
「あ……雨が……」
群衆の一人だった、緑髪の少女が呟いた瞬間。暗雲から一つ一つの雫が舞い降りてくる。
それはやがて、町中に降り注ぐ豪雨となるのだった。
◇
絶え間無く降り注ぐ雫の群れ。その只中に晒されながら――屋敷の屋上で、二人の剣士が対峙していた。
叢雲之断の構えに入るシン。飛剣風を放つ体勢に移るダタッツ。双方の眼光は、雨粒などものともせず互いを捉えていた。
「……!」
ダタッツの首に巻かれた赤マフラーが、雨に濡れた重さでだらりと垂れ下がる。その光景が、五年前の戦いの記憶――身体の奥底に残る「アルフレンサー」の理性に干渉した。
「イヤァアァアッ!」
「……ッ!」
その影響なのか。静寂を切り裂き、振るわれた剣の軌道。天を衝く叫び。
それら全てが――あの日のようであった。
(アルフレンサー……!)
不規則に唸る二本の剣。今までより遥かに速く、鋭く、かつ無秩序な斬撃の嵐。
これぞ真の叢雲之断。ただ狂気のままに振るわれる「シン」の剣では、決して辿り着けない境地である。
紙一重でその猛攻を凌ぎつつも、あまりの違いに感覚が追いつかず――ダタッツの頬や腕、足に鮮血が舞い散る。
さらにこうして防御に回っている間も、彼の斬撃は絶え間無く速さを増しつつあった。今に、かすり傷では済まなくなる。
「……アルフレンサァァアァッ!」
――ならば、こちらも一瞬で勝負をつける。一瞬でその命を刈り取り、苦しまずして「救う」ために。
この豪雨を以てしても、洗い流せない血で手を汚す。その覚悟が命じるまま、ダタッツは柄で一撃目の剣の腹を抑え込み――二撃目が振り下ろされるよ
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