最終話 罪と罰
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…! シュバリエル様万歳! グランニール様万歳ッ!」
「……」
町を蹂躙していた騎士達の壊滅。バルキーテの失脚。その夢にまで見た景色に打ち震える彼らは、口々にシュバリエルに向けて賞賛と感謝の言葉を送る。
だが若き弓兵は、渇望してきたこの瞬間に対面していながら、どこか腑に落ちない面持ちでバルキーテを見つめていた。
そんな彼から視線を外した町民達は、今までの鬱憤をぶつけるかの如くバルキーテににじり寄る。
「バルキーテめ……よくも今まで散々、好き放題してくれたな!」
「絶対に許さない……! おい、水だ水!」
それから程なくして、町民の一人が持ってきたバケツに入った水が、バルキーテの頭に被せられる。その冷たさが、醜男の意識を強引に覚醒させた。
「ぶは! な、なんっ――ひぃいぁ!?」
「……目を覚ましたなバルキーテ。貴様に蹂躙されてきた町の怒り、存分に思い知れ!」
無理やり目を覚まされた彼は、意識が戻った瞬間に現れた暴徒の群れとその形相を前に、再び悲鳴を上げる。
だが、もう彼らに復讐を止める気配はなく――その手に握られた棒や槌が、これから待ち受ける壮絶なリンチの始まりを予感させていた。
「……」
そんな彼を一瞥し、シュバリエルは踵を返す。報いを受けて殺されるのも、やむを得ない。こちらとて命を狙われてきたのだから、当然のことだ。
――それが少年の考えであったからだ。
しかし。
「ぅ、う……」
「……」
足元に転がる騎士達。彼らは皆、手痛い傷こそ負わされてはいるが、全員命に別状がない程度には手加減されていた。
そんな彼らの姿を見つめ――シュバリエルの表情が変わる。
あの男――ダタッツの力ならば、皆殺しの方がむしろ容易いはず。わざわざ死なないように手心を加えながら戦ったのだろう。
その理由を思案するが……これと言える答えは思いつかない。そうしてシュバリエルが考え込んでいる間も、町民達の手はバルキーテに伸びていた。
「ひぃいぃいぃ! 嫌だ、死にたくない死にたくない! 助けてぇぇえ!」
「観念しやがれ、この悪魔が!」
「俺達の怒りを思い知れ!」
怒りと憎しみに染まる彼らの眼差しを見遣り、シュバリエルは胸元を握り締める。
自分達のために単身で大勢の騎士達と戦い、誰一人死なせずに戦い抜いたあの男が。無残に引き裂かれたバルキーテを見つけたら。
――きっと、悲しむのではないか。
「やめろォォッ!」
そう考えてしまった時。すでに少年は、怒号を上げて町民達を金縛りにしていた。
何事かと振り返る町民達に、シュバリエルはさながら町長の如く、手を翳して高らかに叫ぶ。
「バルキーテの罪は司法に則り、公正に処罰する! 勝手な行い
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