第3話 戦士達の決断
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していたことに、ダタッツは驚嘆する。
……それほどまでに、シンの打倒にこだわっていたのかと。
「ダタッツ君。……君は、知っているね?」
「……!」
「何を、とは言わん。なぜ、とも聞かん。だが……もしも君が、その剣で戦おうというのなら……『救って』くれ、彼を」
「……」
そして、さらに彼の口から出てきた言葉に、思わず目を剥いてしまう。
――グランニールは、気づいている。シンの実態にも、自分の正体にも。それを悟ったダタッツは、その心中を慮り暫し目を伏せる。
やがて目を開いた彼は、静かに……それでいて厳かに、銅色の切っ先をシンに向ける。その眼差しは、手にした剣よりも遥かに鋭く、仇敵を貫いていた。
「救わねば」ならない仇敵を。
「グ、ォ、ガァアァアア! テ、イコ、ク、ユ……ウ、シャァアアアァアッ!」
そんな彼と相対するシンは、突如悶え苦しむかのように絶叫を上げて二本の剣を振り回す。だが、やがて血走った狂気の碧眼は動きを止めると、荒い息に揺れながらも真っ直ぐにダタッツを射抜いた。
(アルフレンサー。……あなただけは俺が、「帝国勇者」伊達竜正として、引導を渡す。そうしなければ、誰一人「救われ」ない!)
◇
――五年前。大陸を統べる帝国は、小国であるはずの王国の抗戦に苦戦を強いられ。五年にも渡る小競り合いを繰り返していた。
そんな膠着状態に終止符を打つべく、かつて魔王の支配から世界を救う為に齎された魔術「勇者召喚」を決行。異世界から遣わされる人類の希望であるはずの勇者を、戦争の兵器として投入するという邪道に踏み込んだ。
結果として帝国は王国を征服したものの、勇者自身も戦火の中に行方をくらまし、人々は戦死とされた彼に畏怖と皮肉を込め、「帝国勇者」と称した。
過去にも帝国は、魔王が消え去り平和を迎えた大陸を制覇すべく、神が魔王に抗する術として齎した「魔法」を侵略に利用してきた。
その行いに怒った神が、魔法の力を人類から奪い去ってから数百年。彼らは最後に残された希望さえ、戦争に利用したのである。
だが、どのような理想や正義を掲げたところで、結局は力こそが絶対。神の使徒たる勇者の力を人間に向けさせたとて、それを咎められる力がなくば、誰もが口を噤むしかない。
支配下に置かれた王国も、そう。力がないがゆえに蹂躙され、己の正義を踏みにじられた。その怒りさえ、容易く踏み潰してしまう力によって。
しかし。
だからこそ、力ある者が正義を重んじ、弱者を守らねばならない。
その理念を背に、死を偽り帝国勇者としての己を捨てた伊達竜正は、自身に斬られながら生き延びたために狂気に堕とされた騎士達を救うべく戦った。
だがそれすらも、エゴの域を出ず。
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