第3話 戦士達の決断
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一瞬から生まれる隙が、好機だった。
「……アチャアッ!」
「……!」
それは、まるで閃光のように。突き出された文字通りの鉄拳が、鉄仮面の顎を打ち抜いた。不動の鎧騎士が初めて、天を仰いでよろめいていく。
「ガァ……ァ!」
「お前は二つ。私は四つ。……得物の数が違う!」
鉄製のセスタスで殴られたシンが見せた、一瞬の隙。そこに全てを、ぶつける。
グランニールは両手を地に叩き付け、両足を一気に振り上げた。そこから、大きく開かれた二本の脚が唸りを上げ、空を裂くように振り抜かれて行く。
狙うは鉄仮面。シンの顔面。
その一点にのみ狙いを集中し、武人は渾身の蹴りを放った。
「――阿修羅連哮脚ッ!」
轟音より速く。抉るように深く。
鋼鉄を纏うグランニールの脚が、一発、二発と鉄仮面を打つ。刹那、老境の武人が放つ壮絶な怪鳥音が、絶え間無くこの空間に反響した。
「ゴ……!」
「ホォウアチャァアッ! リャァアタタタタタタァァァァッ!」
怯んでも終わらない。片膝を着いても止まらない。シンが地に伏せるその一瞬まで、休むことなく回転と蹴りを続行した。
……そう。例え、百発を越えても。
(これほど、とはッ……!)
百を超える蹴りを顔面に浴びながら。絶え間無く、常人なら一発でも瀕死を免れない阿修羅連哮脚を喰らい続けながら。
それでもなお――シンの牙城は崩れなかった。片膝を着きながらも、しっかりと上体を維持したままでいる。
そして、最後に音を上げたのは……グランニールの方だった。
「ぐッ!?」
高齢に体力を奪われてか、百五十発を超えた段階で、徐々に威力は失われつつあった。その弱り目を、技を受けていた当事者のシンが見逃すはずがない。
二百発目に放たれた蹴りは、鉄仮面を怯ませる威力には至らず。二百一発目の蹴りは、とうとうシンの剣によって防がれてしまった。
(弱点には違いないはず! その一点のみをここまで攻められていながら、この程度のダメージしか受けておらんのか!? なんという……生命力!)
そして……容赦無く。
シンは二本目の剣を、死の宣告を下すかのように――天へ翳す。
(アルフ……!)
この一閃に、慈悲はなし。
◇
――その頃。静寂が訪れた港町の街道には、騎士達の身体が死屍累々と横たわっていた。絶え間無く響くうめき声が、彼らが味わう痛みを物語っている。
「……」
自分に向かう殺気が絶えたことを悟った黒衣の剣士は、そんな彼らを一瞥したのち銅の剣を鞘に収め、視線を丘の屋敷へと向ける。
鉄仮面が放った殺意の濁流は、屋敷の外にまで溢れ出ていた。
(……グランニールさん、シュバリエル君……!)
そ
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