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ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第3話 戦士達の決断
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わりにしてやる。あの子がお前に気づき、敬愛すべき兄に絶望せぬように」
「……」

 そして――阿修羅連哮脚を放つ体制に入り。鋭い眼光で、鉄仮面を真っ向から睨み付ける。それに寸分たりとも怯むことなく、シンも二本の剣を同時に構えた。

 ――それは、彼の長男も生前に浸かっていた技。王国式闘剣術、叢雲之断。
 シュバリエルが言う通り、彼の兄と同じ技だった。

 そのことを、父グランニールはよく知っている。その技を使いこなせる剣士など、今の王国には息子しかいないことも。

「……アルフ。せめて父として、私が葬ろう。誰もお前に気づいていない、今のうちに」

「グゥッ……ガアァアァアァアッ!」

 その、全てを見透かしたように見つめるグランニールの瞳と。狂気に自我を封じられたシン――アルフレンサーの眼差しが、重なる。
 悲鳴とも怒号ともつかぬ絶叫が轟いたのは、その直後だった。

 ◇

(鎧の隙間を縫って放った獅子波濤ですら、あの肉体を貫けなかった。あるかどうかもわからぬ「隙」があることを願って攻めては、シュバリエルの二の舞であろう)

 迫り来る二つの剣閃。その刃の流れを読み取り、グランニールは僅かな身のひねりだけでかわしていく。すれ違いざまに膝関節や鳩尾に蹴りを入れる――が、まるでダメージが通る気配がない。
 振り返り、シンの方へ向き直る頃にはすでにあちらも二撃目に移ろうとしていた。

「ぬっ……ホワチャアッ!」

 怪鳥音と同時に、二度目のハイキックが鉄仮面を狙う。シンは己の頭を狙う速攻に対し――剣で防御して見せた。
 鉄製のレガースと剣の刃が鉄仮面の近くで交わり、強烈な金属音が反響する。

「……!」

 その光景にグランニールは目を剥き、一気にその場を飛び退いて反撃の一閃をかわした。そして、暫しの沈黙を経て。
 口元を不敵に緩め、ゆらりと拳法の構えを取る。

 彼は自分の蹴りが防がれたことに驚いたのではない。彼は、シンが初めて「防御に回った」ことに驚いたのだ。

(この五年間であやつの動きを研究し尽くすまで、我らは近寄ることすらままならなかった。……格闘戦が成り立つ今ならわかる、頭部だけはあやつといえど「防御」に回らざるを得ないのだと!)

 それに気づいた今、その情報を活かさない手はない。グランニールは一世一代の賭けに打ち勝つべく、一気に間合いを詰めて行く。

「オガアァアアッ!」

 そこから強烈な殺意を感じてか。シンは天を衝くほどの絶叫と共に、二本の剣を同時に振り抜く。
 袈裟斬りと横斬り。全く異なる軌道を描く双刃が、老境の武人に振るわれた。

「――ホォオゥッ!」

 それに抗するが如く、グランニールも右脚で横斬りを受け、左脚のハイキックで剣閃を凌ぐ。……その
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