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ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第3話 戦士達の決断
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なる。だが、グランニールはそこで一度思考を敢えて断ち切った。

(……いや。今は、よそう。彼はその剣腕を以て、バルキーテの騎士達を屠った。今は、それだけが真実)

 そして顔を上げた先では――黒髪を靡かせる青年が、ふわりと笑みを浮かべていた。

「……ジブンはこれから、あの騎士達と戦います。この混乱に乗じれば、労せずバルキーテ邸に乗り込めるかも知れませんね?」
「……君も、食えない男だ。――恩に着る、行くぞシュバリエル」
「と、父さん! こいつを信じるんですか!?」
「少なくとも彼は騎士達の『敵』に回った。否応なしに連中の注意は彼に向く。彼の真意がどうであれ、これは我々にとっての好機。違うか?」
「ぐ……」

 そんなダタッツの意図を汲み取り、グランニールはこの機に乗じるべく動き出す。シュバリエルも、一度敵対したダタッツに恩を着せることに難色は示すが、結局はこの隙に突入することに決めたのだった。
 幼い弓兵は、落とした矢を拾い上げると、訝しむような視線を送りながら走り出す。

「……勘違いするなよ! お前の暴動に乗っかってるだけだからな!」
「わかってるわかってる。……それと、男の子だったんだねキミ」
「う、うるせぇ! お前だって女みたいな頭してるくせにぃい!」

 そんな彼らを見送った後――改めて剣を構え直すダタッツは、銅色の刃先を騎士達に向ける。先刻の「飛剣風」を受け、ダタッツが敵に回ったと認識した彼らは、殺気立った表情で黒衣の剣士と対峙した。

「警告は一度だけだ」

 そんな彼らに、ダタッツは。

「――失せろ」

 聞き入れられるはずもない、戯言を呟き。罵詈雑言を上げて踊り掛かる、騎士の皮を被ったケダモノの群れに向かって行く。
 閃く剣に、一迅の風を纏わせて。

 ◇

 港町に巻き起こる騒乱。
 シンに並ぶと噂された剣士の、予期せぬ裏切りは騎士達に激震を走らせ、パニックを拡大させていた。
 とにかく裏切り者を止めねばならない。そのアクシデントに気を取られてしまった彼らは、肝心の仇敵を見失っていた。
 グランニールと、シュバリエルの海賊親子。その二人は騎士達の混乱に乗じて、港町の手薄な街道を駆け抜けていた。

「増援が今も出続けている。……彼がまだまだ持ち堪えている証だな」
「あ、あいつそんなに強かったのか……? 確かに、オレの獅子波濤は破ったけど……」
「……生きておれば、アルフとも良きライバルになっていたやも知れん」
「へ、まさか! あいつがアルフ兄さんに敵うわけないよ」

 ダタッツの長時間に渡る陽動から、彼の戦闘能力の一端を垣間見るグランニール。そんな父の言葉に反発しつつ、その後に続くシュバリエル。彼らはバルキーテ邸の裏手に回ると、隠し通路から地下を目指す。
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