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ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第2話 港町の真実
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!」

 語っているうちに怒りが再燃したのか、タスラは拳を握り締め、唇をきつく噛み締めた。かつてこの町を守るために殉じた騎士の技が、今は町を脅かしている。その当て付けのようにも取れる現状が、彼女の怒りを煽っているのだ。
 そんな彼女や、話を聞いて鎮痛な面持ちを浮かべる町民達の表情を見れば、グランニール親子がいかに慕われているかが容易に窺い知れる。

(……五年前、この港町近くの森林で戦死。しかし遺体は奈落に消えて発見されず……か。そしてあのシンという男が、王国式闘剣術の使い手とはな。……やはり、間違いない)

 そして彼女の口から語られた、この港町の真実から――ダタッツは、ある一つの結論に辿り着いていた。
 彼はアイスミルクを飲み干すと、勘定を置いて立ち上がる。

「ご馳走様。……ジブンがここに居ては、誰もいい顔はしまい。これで失礼する」
「ねぇ。あんた、ダタッツって言ったわね。……あんたは、あたし達の敵なの? 味方なの?」

 そんな彼に、タスラは訝しむような視線を向ける。自分を暴漢から守った男ではあるが、昨日の戦いでグランニール達と敵対した男でもある。
 言葉を交わした限りでは、悪い人間ではなさそう、というのが直感ではあったが。やはり善い人間であるとも信じ切れなかったのだ。現に、海賊と戦ってしまった以上は。

「……」

 ダタッツは、何も答えない。無言のまま、立ち去って行く。銅の剣を納めた鞘を、握り締めて。
 そんな彼の背中を、タスラはただ見送るしかなかった。敵かどうかもわからない相手に、罵声など浴びせられない。だが、味方という確証もない。
 誰も、何も語らないまま。黒衣の剣士は、静かに酒場から姿を消すのだった。

 そうして、酒場にようやく本当の平穏が戻る頃。タスラは思い出したように、視線をカウンターに移す。
 正しくは、そこに掛けられた、緑の上着に。

「……返し、そびれちゃったなぁ」

 ◇

 この日の、夜の帳が下りる頃。
 月夜に照らされた港町の夜景を、太ましい醜男が見下ろしていた。一重瞼の先に映る景色を前に、分厚い唇が歪に釣り上がる。

(ぐ、ふふふ。なんという愉快。なんという愉悦。奴の全てを奪い、踏み躙るこの感覚……堪らん、堪らんなぁ)

 醜男の名はバルキーテ。かつてグランニールの部下だった彼は、今やこの港町の支配者としての地位を欲しいままにしていた。
 太い指に囚われたワイングラスが、ゆらりと蠢く。

(儂の欲した地位と名誉を全て奪い続けてきた奴も、今や下賤な海賊。シンがおる限り、奴らの逆転は決してあり得ん。さらに今に限った話ではあるが、あのダタッツとかいう若造も儂を信じ切っておる。鬼に金棒、とはまさにこのことよ)

 彼はちらりと背後を見やり、銅像のように
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