第2話 港町の真実
[7/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
!?」
そんな同胞の勧告を受けて、ダタッツに斬り掛らんとしていた騎士達に緊張が走る。すでに昨日の戦闘のことは、参加していなかった一部の騎士達にも広まっていたのだ。
そして、そんな彼らを通して市民達の間にも、ダタッツという来訪者のことは知れ渡っている。
予想だにしなかった噂の剣士の登場に、騎士達も市民達も衝撃の余り、あんぐりと口を開けていた。
やがて、噂に違わぬ銅の剣が、彼らの眼前で引き抜かれた時。
「も、申し訳ありませんでしたァァァァ!」
自分達が剣を向けている相手。その実態に辿り着いた騎士達は悲鳴を上げ、我先にと酒場から逃げ出して行く。鞘から出掛かっていた銅色の刃は、彼らの足音が消え去ると共に、元の場所へと納められた。
「……」
「あん、たが……」
一瞬にして酒場にたむろしていた騎士達を追い払ってしまった黒衣の剣士。その背を暫し、タスラは複雑な表情で見つめていた。
◇
「嘘っぱち?」
「そうよ。全部、バルキーテの嘘八百。あんただって見たでしょ、あいつらの所業」
「確かに……。ここにいる王国騎士達の言動から、彼らの言い分を汲むのは難しいな」
騎士達が去り、束の間の平和が訪れた港町の酒場。そこで唯一、剣を携えている黒髪の青年の席に、一杯のアイスミルクが運ばれる。
それを持ってきたウェイトレスは服を着替え、二着目のドレスに身を包んでいた。彼女は、その力量には不釣り合いな飲み物を注文する青年を、訝しげに見つめる。
「にしてもアイスミルクって……あんた強い癖に子供っぽい物頼むわね」
「メニューによると酒以外の飲み物が、これだけだからな。未成年である以上、酒は飲めない」
「十八歳なんでしょ? その歳で酒が飲めない国なんてあったっけ……」
「遠い故郷ではそうだった。それだけのことだ」
タスラの視線を気にすることなく、ダタッツはアイスミルクに口を付ける。そして、神妙な面持ちで彼女を見上げた。
「……しかし、戦中に逃げ出したのがバルキーテの方だったとはな。眼の色からして、話に聞くような傑物ではないと感じてはいたが」
「あったりまえでしょ! あいつがあたし達の味方なわけないじゃない!」
ダタッツがふと漏らした言葉に、タスラは眉を吊り上げる。その瞳は、憎き現町長への怒り一色に染まっていた。
――ダタッツが聞いたバルキーテの話は、全て偽りだったのだ。
戦時中、帝国の軍勢がこの港町に迫った時。
当時、町長選挙でグランニールに敗れ、彼の補佐官を務めていたバルキーテは、町長邸の金庫から資金を盗み出し、僅かな数の部下を連れていち早く港町を脱出していた。
バルキーテに資金を盗み出されたグランニールは、町民を逃がすための馬車を工面することも防衛兵力を買い
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ