第2話 港町の真実
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になった上、そのあとすぐにバルキーテ邸に招かれたため、町の散策も満足に出来なかったためだ。
これから王都を目指して旅立つ以上、必要なものは自分の目で確かめて買い集めなくてはならない。常に自給自足の旅人にとっては、鉄則である。
……それでなくとも、あのシンという男の近くにはいない方がいいとも感じていた。近寄る者全てを切り捨てんとする、あの眼光。騎士達が近寄らないのも、当然である。
(シンはあの時……確かに、「帝国勇者」と口にした。まさか、彼は……)
とりわけダタッツとしては、どうしても近くにはいられない、さる「理由」があったのだ。
(……しかし……)
そういった事情から、彼は朝早くから港町を散策しているのだが――どうにも気掛かりなところがあった。
自分を見る町民達の眼が、どこか冷淡なのだ。どちらかといえば、敵意、あるいは畏怖すら感じられる。
彼自身としては、別に見返りが欲しくてグランニールの一味と戦ったわけではない。だが、町を脅かしていた海賊を撃退した者への態度としては、妙だ。
まるで海賊を撃退した自身の方が、悪者と見られているかのような……そんな得体の知れない、気味の悪さがあった。
「……」
「ハハハ、でよー。……んっ? げ、げっ!? ダタッツ様ッ!? へ、うへへへ、お疲れ様でさぁ!」
「ダタッツ様も一杯どうっすかぁ?」
それだけではない。あちこちで王国騎士が巡回しているようだが、勤務態度は優秀とは言えない者ばかりであった。
町民も王国騎士が近づくと蜘蛛の子を散らすように逃げ去っている。今こうしてダタッツと対面している二人の騎士も、路地で飲んだくれていた。
――敗戦以来、優秀な騎士の殆どを戦争で喪った王国騎士団には、劣悪な生き残りが犇めくようになったと聞く。が、これは想像以上の有様であった。
これでは、国のため民のためと戦場に散った王国騎士達も、浮かばれない。
「……」
「あ、あれぇ? どこ行くんすかぁ? 俺らと一杯やりましょうよぉ!」
「バッキャロ! シン様に並ぶかも知れねぇ腕の人だぞ、下手な口きくと首チョンパだぜ!」
ダタッツは悲痛な面持ちで踵を返し、この場を立ち去って行く。そんな彼の後ろで交わされる言葉は、弱肉強食となってしまったこの時代を象徴しているようだった。
(……何かがおかしい。この港町で、何が起きている……?)
◇
あれから、どれほど歩き回ったか。そんな感覚すら曖昧になり始めた頃、気づけば酒場へと足を踏み入れていた。
やはり、と言うべきか。すでに店内は騎士達の溜まり場となっているようであり、店員も他の客も萎縮しているようだった。
「おいこらぁ、何モタモタしてやがんだ! 酒出せ酒ェ!」
「も、申し訳ありま
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