第2話 港町の真実
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る。
その戦火はこの港町にも及んでおり、当時町長だったグランニールは、息子の王国騎士アルフレンサーに戦いを押し付け、自らは次男のシュバリエルと二人で住民を置いて逃げたのだという。アルフレンサーが戦死した後も、二人はとうとう戻らなかった。
そんな彼に代わり、今ではバルキーテが町長として町を統治しているらしい。通常、属国となった王国の各都市には帝国の駐屯兵が居座るはずだが、この港町はバルキーテの「嘆願」により、駐屯兵の常駐を免れているようだ。
そこへグランニールとシュバリエルが、海賊となってこの町を奪還しようと襲撃して来たのが、戦後すぐ。つまり五年間に渡り、グランニールの一味は自分達が町長の務めを放棄して逃げ出した町を、奪おうとしてきたらしい。
「全く奴らの厚顔無恥ぶりには、同じ港町の人間として恥ずかしい限りですな。ダタッツ殿にも、事情の説明とはいえ聞くに堪えない話をしてしまいました」
「いえ、訳を知りたいと申し上げたのはジブンですから」
「そうですか。いやはや、ダタッツ殿の慈悲深いお心には、心底頭が下がりますなぁ」
「……」
にこやかに両手を擦り合わせるバルキーテ。そんな彼の張り付いたような笑顔を、ダタッツは暫し神妙に見遣る。
(……妙な話だ。強欲な帝国軍が、小さな港町の町長一人の「嘆願」だけで、駐屯兵を置かないはずがない。それにあの人達の眼は……)
そこまで思考を巡らせたところで、ダタッツはある一つの事柄を思い出す。
「そういえばこの五年間ずっと、グランニールの一味を追い払ってきた用心棒がいらっしゃるのですよね」
「シンのことですかな? あやつは戦後に私が拾った剣士でしてな。元騎士だそうですが、戦火のせいなのか過去の記憶がないそうでして。腕は立つので私の護衛をやらせておりますが、何しろ不気味な奴でしてなぁ。他の騎士達も含め、誰も近寄らんのです」
五年間、グランニールの一味と戦い続けてきたという「シン」。
騎士達も語ることを控えていた、謎の存在。その人物のことが、どうにも気掛かりだったのだ。
僅か一瞬の太刀合わせしかしていないが、グランニールがかなりの手練れであることは肌で感じた。シュバリエルも、決して弱いとは言い難い戦士だった。
そんな彼らを五年間も跳ね除けてきた猛者とは、一体何者なのか。
「そうですか……。とても強い方であると騎士の方々から伺っておりましたので、一度お会いしたいと思っていたのですが」
「いますよ、シンならそこに」
「え……?」
その実態は、ダタッツの想像はおろか――索敵能力すらも超えていた。
バルキーテが指差す方向へ、振り返ったダタッツの視線の先。そこには、二振りの剣を腰に差した鎧騎士の像が飾られていた。
二メートルに迫るほど
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